将棋は歴史と伝統あるゲームなので,一歩間違えれば古臭くて停滞した世界になってもおかしくないと思います.しかし実際の棋界は戦法の流行がめまぐるしく移り変わり,三ヶ月前の常識が通用しないような激しい戦いが今なお繰り広げられており,非常にエキサイティングな世界なのです.
先日のはてな匿名ダイアリーの記事が700ブクマ越えてて,普段目にする機会が少ない,プロの将棋が持つ熱量に多くの人が触れたようです.そんなわけで,自分も普段からプロ棋戦関連エントリばっか書いてますが,これを機に初心に返って,将棋を『指す』ではなく『観る』楽しさを解説してみたいと思います.
観る将棋ファンについて

- 作者: 梅田望夫
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2009/04/24
- メディア: 単行本
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本書は,元々将棋は好きだったが長らく指す事は無かった梅田望夫氏が,「指さない将棋ファン」の立場から,後述するタイトル戦のリアルタイム観戦記というのを始め,それをまとめた本です.当然というか,将棋の内容よりもむしろそれ以外の要素が多いわけですが,それ故に将棋観戦のおもしろさが広く伝わる名著に仕上がっています.
またこの本を機に,従来は観戦記者の人が後日まとめる形だった観戦情報を,将棋連盟側がネットを中心に積極的にリアルタイムで発信するようになり,より臨場感溢れる中継がファンへ届くようになったわけです.

- 作者: 渡辺明
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/11/01
- メディア: 新書
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一般的なイメージとして、将棋は楽しむのも何か難しそうに思われてるのではないでしょうか。でも、そんなことはありません。将棋を指すのは弱くとも、「観て楽しむ」ことは十分できます。 例えばプロ野球を見る時。 (中略) 「それくらい捕れよ!」と言いはしますが、実際に自分がやれと言われたら絶対にできません。「しっかり決めろよ!」も同じで自分では決められません。将棋もそんなふうに無責任に楽しんでほしい。(渡辺明 頭脳勝負ー将棋の世界より)
実際,自分も将棋自体はちょっと強い小学生低学年とやって鼻で笑われる自信があるほど弱いですが,一生の趣味として考えつつあるくらいに将棋観戦にハマっています.
将棋観戦が趣味として優れている点
- 頻度がほどよい
- 将棋の中継アプリにて1日2~3局目安で毎日配信されるので,今日の野球の結果をスポーツニュースで見る,ぐらいの気持ちで将棋観戦に触れられます.
- タイトル戦が7つある
- 一番盛り上がるタイトル戦が1つ4局で決着が付くとしても2週間に1度ペースで行われている計算で,定期的に山場が訪れますので,タイトル戦追うだけでも楽しめます.
- ネットとの連携が密
- WEBサイト上またはモバイル機器向けなどへの対局の指し手中継,ドワンゴをスポンサーに迎えてのニコ生によるタイトル戦完全中継,タイトル戦の公式ブログ,棋士個人のTwitterなど日本古来の伝統競技とは思えないくらい,ネットを利用した情報提供がなされており,非常に機能しています.プロスポーツでもここまで本腰入れてるところは少ないでしょう.
- 費用が非常に低い
- もちろん払おうと思えばいろいろと払えますが,軽く触れるだけなら中高生でも気軽にでき,非常に敷居が低いです.例えば,女流も含めてタイトル戦を中心にネットに配信されている解説付き棋譜は無料です,ニコ生で中継もよくやってます.毎日の携帯棋譜中継も月額300円ちょいです.
- 将棋以外の部分の棋士の個性が魅力
- ゲームの勝敗1つに人生を賭け,真理を追い求めている棋士が個性的になるのは必然でしょう.さらに,1手1手の考慮時間が長いため,ニコ生なんかは特に将棋以外の面が多く見られて,必然的に将棋関係ない棋士自身の情報が増えていきます(笑)
将棋観戦への入り口

どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?―現代将棋と進化の物語
- 作者: 梅田望夫
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2010/11/25
- メディア: 単行本
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既にいくつかリアルタイム観戦記を書いた後なので,『観る将棋』とはなんぞやという部分からは離れていますが,単体の読み物としても楽しめる記事となってますので,まずここから興味持ってもらえればいいのではないかと思います.
多少将棋がわかる方向け
2ch将棋板の実況まとめがメインの『2ch名人』,おもしろいです.
たとえば,先日の王座戦第2局(公式中継棋譜はこちら)だと,羽生さんが角交換四間飛車選んだときの大騒ぎに始まり,中盤の一人千日手模様の「やっぱダメか」→終盤の大逆転の「わけがわからないよ!!!」まで,臨場感溢れるレスが躍っています.
また,素人レベルの疑問にも解説レス付いてたりと,中継の解説情報としても有用だったりします.
さいごに
一時期,中長期的に続けられる趣味を探していた際に出会った将棋観戦ですが,たった1年半でどっぷりはまっており,タイトル戦会場まで足を運んでテンション上がりまくるまでになりました.
趣味:将棋というのは何歳になっても悪い印象にはならないでしょうし,この先の羽生世代の世代交代がいつになるのか楽しみですので,10年,20年と長きにわたって追っていくつもりです.
ここまで読んで少しでも興味を持ってくださった方は,是非将棋観戦に触れてみて,そのおもしろさに目覚めて欲しいと思います.
おまけ
やべえよ.先後ともに徹底的に角道を止めて我が道を行き続けていたハッシーが順位戦 VS渡辺竜王戦の後手で角交換振り飛車選んだよ!!!! テンション上がりますわー.