身近で奥の深い「硬さ」と真摯に向き合ってみる8000文字

明けましておめでとうございます。2018年の初更新から暴発しました。 業界誌のちょっとした技術解説クラスの記事が出来上がってます。金出すから書けと言われたら、3万円でも書きたくない奴ですね。

 

さて、皆さんは「硬さ」について深く考えた事はあるでしょうか?
さすがに「硬さ」という単語がわからない人はいないと思います。 「長さ」や「重さ」、「強さ」といった一般的な物理量と比較しても劣らない知名度でしょう。 では「硬さとは何か」を具体的に説明できますか?

今回は触れませんが「かたさ」は、硬さと堅さ、固さと書き分けられてたりもします。

私、この辺りには一家言あるんですが、その身から言っても「硬さとは何か」というのは永遠の課題とも言えるテーマです。

では、どこがどう課題なのか。 一般的な新書レベルで噛み砕いて書いてみました。構成考えずに書いたので話があっちこっちに飛んでますが、専門的にもそれなりに踏み込んだ内容なはずです。

 

togetter.com

事の発端はこれを読んだからなんですが、まとめ内容も、まとめへの反応も、引っ掛かるところが多かったので、基本に立ち返って「硬さ」について自分の考えを整理し直しておこうかな、と。

私自身は金属材料屋なので、鉱物に対してとは多少発想が異なりますが、適宜読み替えてもらえればと。


硬さとは何か?

いきなり本質的なところに踏み込みましょう。

前述した「長さ」や「重さ」、「強さ」といった一般的な物理量は、その大きさを数値で表すための決まり事が明確に定まっています。 例えば、材料の「(引張り)強さ」だと、その材料に荷重をかけて引っ張り、破断した時の荷重と、材料自身の断面積から求まります。 要するに、決まった太さの物に対し、切れた時にかかっている力の大きさです。

何故そんな事が可能かというと、これら物理量は、単一の物理的性質により厳格に定義されているからです。古典的には、MKS(メートル、キログラム、秒[second])の基本単位を組み合わせれば、物理量は(ほぼ)表せます。

 

さあ、そこで問題になるのは「複数の」物理的性質が関与してくる「硬さ」のような場合です。

餅は餅屋。硬さを測る「硬さ試験機」メーカーのサイトを見てみましょう。

一般的には、「硬さは概念的に物体の堅固堅牢の程度を示し、磨耗に対する抵抗、引掻きに対する抵抗、弾性係数、降伏点、破断強さ、粘りと脆さ、展延性などに関連する性質の単独もしくは複合した関係性を示す尺度。」などと説明されていますが、工業界などで用いられる「硬さ試験結果」は数値として示され、常に比較してどちらが硬い、軟らかいを区別するもしくはランク付けしているに過ぎません。この「硬さ」を物理的に定義することは、前述の言葉の意味のように非常に困難なパラメータであって、規格で規定され多く利用される「硬さ試験」とて何ら変わるものではありません。
https://www.mitutoyo.co.jp/new/report/no249/mamechishiki/index.html

 抜粋すると「堅牢堅固の程度」、「性質の単独もしくは複合した関係性を示す尺度」、「常に比較してどちらが硬い、軟らかいを区別するもしくはランク付けしているに過ぎません。」ってあたりでしょうか。

つまり、硬さというのは複数の物理的性質が作用しあった結果の尺度でしかないわけです。 相対的な比較は出来ても、絶対的な物理パラメータとしては表せません。

 

モース硬さと硬さ値

とはいえ、一定の基準さえ決めてしまえば、硬さの度合いを数値では表せます。このように、「物理量」ではないが、規格で定められた手法で計測され、実用上の尺度として有効なものを「工業量」といいます。JISの定義も載せておきます。

 

複数の物理的性質に関係する量で,測定方法によって定義される工業的に有用な量。硬さ,表面粗さなど。

 

ここまで説明してきたものそのままですね。併せて、硬さを表す値は「硬さ値」となります。
では、知名度的にも、分かりやすさ的にも、モース硬さで考えましょう。(そもそもモース硬さが硬さ値と言えるかが怪しいですが……)

 

硬いって事は傷付きにくいって事なので、ダイヤモンドを最大の10として基準の物質決めてから引っ掻くことで、Aより硬いが、Bより軟かいから……とやって得られる相対的な値ですね。

 

流石にこれだと大雑把過ぎて工業的には使い物にならないため、もっと細かい数値が得られる「押し込み硬さ」を測るのが一般的です。 詳しくは後述しますが、ビッカース硬さ試験を例に取ると、「1000HV」のような硬さ値が得られます。

 

硬さ値の制約

ここまで来て、ようやく硬さの尺度を得ることが出来ました。しかしながら、これはあくまで工業量だという事を忘れてはなりません。工業量である「硬さ値」は「試験で得られた硬さの目安となる値」以上の意味を持ちません。

何が言いたいかというと、「1000m」は「500m」の2倍長いのは当たり前ですが、「1000HV」は「500HV」の2倍硬いかというと、決してそうではありません。そもそも硬さというものの物理的な定義が曖昧な以上、「2倍硬い」っていう比べ方そのものに物理的な意味がないわけです。

また、硬さ値は物理量では無いので、単位っぽく書いた「HV」は「Hardness Vickers」と測定方法を示す「硬さ記号」であって、MKS系に換算するものではありません。 一部のJIS含め、次元を無理やり合わせてPa(パスカル, 圧力)表記にする研究者もいますが、ほとんどの場合は当記事のように硬さとは何かへの理解を怠っているだけです。私は鼻で笑ってるぞ。 たまに学術的な意味も伴っている人もいるので、わかってやってるならそれはそれでいいと思いますが。

 

完全に余談ですが、何でこんなに回りくどくチクチク書いているかというと、「数字+大文字の硬さ記号(+試験荷重)」でJISやISOにも規定されているのに、硬さ値表記を意識的かつ正確に出来ている人は専門家でも少ないんですよね。 歴史的経緯もあるんですが、小文字使ったり、硬さ記号を頭に持ってきたりと、本当にグチャグチャなんです。
そこで、とある国際学会の予稿集で数百本をまとめてgrepしたことがあるんですが、きちんと書けてる奴は5割を割ってましたし、試験荷重まで併記できているのは2割にも満たなかったというね。 お前ら、もっと真摯に硬さと向き合えよ、と。

 

更なる余談ですが、研究者レベルでいくと、硬さ値を測る時の表現は「硬さ試験」であって、「硬度測定」ではないという原理主義者(?)も存在します。 「硬さなんてのは測定するほど厳密な度合いではない」、「硬軟のレベルを相対的に試験しているだけで測定とはいえない」わけです。 ここまでこだわる人は稀ですが、水のミネラル量な「硬度」との混同もありますし、JISでも「硬さ試験」で統一されているため、個人的には「硬さ」、「硬さ試験」を多用しています。

 

あ、あとT研(旧H研)の硬さ試験の実習、この辺り踏まえるとことごとく間違った事を教えてるから、ホワイトボード書き直して、TAも勉強し直した方がいいぞ。 #超私信

 

硬さ試験

私信を書きながら、大学院生でもここまで意識出来てる奴は稀だろ……な内容を一般向けブログに書いてどうする、とか冷静になりかけましたが、気にしたら負けです。いよいよ、実際に硬さを測りましょう。ちょっと出てきた、「押し込み硬さ」についてです。

 

物理的に不明確な「硬さ値」をどうやって正確に測っているかというと「測定したい物体に対し、ものすごく硬い物質を押し付けて、出来た穴の量から算出」という原始的な方法が主流です。機械部品を測るとすると、実物そのものの表面に押し付けたり、あるいは切断機で断面を出して、断面側に押し付けて測定するわけです。 多少の作業は発生しますが、試験方法としては「かなり楽」な部類です。
この「硬ければ硬いほど表面に穴が開きづらいよね」って、原子間の隙間まで観察出来る21世紀に、もう少しハイテクな手法はないものかとも常々思うんですよ。 でも硬さに限らず、機械的特性の測定手法は19世紀からベースは変化してませんし、これが実用的なんだからしょうがない。

冒頭のTogetterでも測ったモース硬さがバラつきまくってるように、人力で引っ掻いても安定しません。 そこで、接触状態、かかる荷重、押し込み速度などを機械的に制御した硬さ試験機により硬さ値を求めます。


さて、ここでも立ちはだかるのが、硬さ値は工業量だという点。 定められた基準に対して試験していくわけですが、基準を決めるのが物理法則では無く、人間になるため、規格が乱立しまくってるわけです\(^o^)/

もちろん、各規格にそれぞれ違う長所があるから、ISOレベルでいくつもの手法が定められているわけですが、大体の硬さ試験機は「押し込み硬さ」用です。 要するに押し付ける硬い圧子(=先端部分)と、加える荷重、そして算出法が若干異なるだけです。

 

  • ロックウェル硬さ試験:「硬い金属球」を押し付けて「押し込んだ深さ」から算出
  • ビッカース硬さ試験:「ダイヤモンドの針」を押し付けて「圧痕(=残った跡)のサイズ」から算出
  • ブリネル硬さ試験:「硬い金属球」を押し付けて「圧痕(=残った跡)のサイズ」から算出

 

……馬鹿なの? 死ぬの?

実際、押し付ける部分を交換して、各種硬さがマルチに測定可能な試験機も出てますし、個人的にはビッカース硬さ以外のすべての押付け硬さ試験が滅するべきだとも思ってます。

まあ、ビッカース硬さ試験の「ビッカース」も、開発したのが「英国:ビッカース社」が由来ですしね……

 

ここで特筆すべきは、それぞれの硬さ値は相互に換算できるという事です。「ロックウェル硬さ:60HRCだから、ビッカース硬さだと700HVくらいか」のような相互比較が可能なため、試験方法が乱立してても、とりあえず1つ試験できれば何とかなるのです。
その換算表がネット上でも手に入るので、気になる人は「換算表 硬さ」でググってください。

 

こんな感じにややこしくなった硬さ試験の歴史については、国立科学博物館が歴史的経緯を詳細に調査した資料が公開されてみます。ページ数だけでも確認していただきたいですがみっちりとしたA4 2段組みで71ページという凄まじさ…… 

http://sts.kahaku.go.jp/diversity/document/system/pdf/054.pdf

 

硬さと強さ

まったく構成を考えずに書き始めたので今更ですが、硬さを測る有用性についても説明しますね。

硬さ試験のメリットとして、学術的に物質の硬さをわかるという側面もありますが、それ以上に「工業的に使い勝手のいい値が簡単に測れる」という側面が大きいです。

 

たとえば、機械部品の機械的な特性を知りたいとなった時に、まずは何よりもその「強さ」が重要になります。 強ければ壊れにくく、摩耗しづらく、疲労破壊しづらく、サイズを小さくしてコストダウンなども可能になります。

しかしながら「強さ」を測定するのって大変なんですよ。素材的な強さを測ろうとすると引張り強さになりますが、引張り試験は決まった形の試験片を壊して測る事になります。 しかしそうやっても、機械部品になった状態の「強さ」を実測できてるとは言えません。 当然ながら、試験片の作製にコストも時間もかかります。

そこで出てくるのが硬さ試験です。

 

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溶接材料と探傷剤の(株)タセト

わかりやすかったのでこちらのサイトの資料Iより抜粋です。見ていただければ一目瞭然ですが、横軸のビッカース硬さに対し、引張り強さTS(MPa)は綺麗に比例関係を持ってるんですね。 実用的には、ビッカース硬さ値×3 = 引張り強さ(MPa)で概算できます。 もちろん、ビッカース硬さ自身が他の硬さとも相互換算できるため、どんなものでも硬さ試験さえやれば、その部品の素材的な強さ、ひいては様々な機械的な特性が見積もれちゃうわけです。 容易に測定できるため、量産品の品質管理などにも適します。

 

硬さと靭性 ~ダイヤモンドは砕けます~

冒頭のTogetterまとめ、自分に鉱石側の発想が無いとはいえ、何で突然、靭性の話が出てきているのかは正直わかりませんでした。 とはいえ、硬さと靭性について、友人のFacebookのコメ欄で触れたので、関係性についても簡単に整理しておきますね。

 

まず、そもそも「靭性」がわかりづらいですが、要するに「粘り強さ」です。これが低下すると「脆性」=脆い性質を示します。  靭性の場合、物質自身の粘り強さに加え、表面の傷の影響も受けます。さらに、加わる変形の速度も関与してきます。 簡単に言うと、衝撃を与えた時の話です。 また、複合的な性質が出てきましたね。

そして一般的に、硬さが上がると靭性は下がる傾向にあります。強い物質が伸びにくいのに似た奴です。 顕著な例が、ガラスや陶器ですね。
ガラスなんかは硬さだけで見ると非常に硬いんですが、御存じのように、衝撃には極めて弱いです。 また、ガラスカッターのように先に切れ目入れてやると、ちょっと叩くだけで傷からパキッと割れます。

一方、靭性が優れているのが金属です。 ある程度硬くて強いのに、粘り強いため、構造材に多用されるわけですね。 いくら硬くて強くても、何かちょっとぶつかっただけで砕けていては話になりませんから。

この話題の究極形がダイヤモンドです。 天然物としては最硬であるダイヤモンドさんですが靭性は良くないため、トンカチで軽く殴るだけで粉々に砕けます。御行儀よくありませんが、YouTubeの転載動画を置いておきますね。

youtu.be

本当はここから、私の専門分野の1つである亀裂先端の応力緩和について語り始めて1万文字だろうが続けられますが要らないですか? そうですか。

 

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完全に脱線ですが、ついでに身近な靭性(?)として、スマートフォンのガラスについても触れてきましょう。最近のスマートフォン用ガラスは、以前よりだいぶ割れづらくなりました。全世界で日常的にガラスの板を持ち運んでいるとか、破壊力学屋さん的には信じられない時代なわけです。

上のスライドは、いろいろ整理してたら、大学で講義した時の資料が出てきた分です。 注目してほしいのは備考部分です。

ガラスはどうやっても表面に微細な傷が残るわけですが、その傷が開く方に力が加わると、傷=亀裂の先端に力が集中→亀裂が伝播→割れます。 食品の小袋包装に切込み入れてあると開けやすいアレです。

そこで出てくるのが、スマートフォンで多用されている、化学強化ガラス。(こちらは専門分野から外れるので、内容の精度は問わないで下さい)

化学強化ガラスは、硬く、傷つきにくいにも関わらず、それと同時に「圧縮応力」の付与により靭性も向上させているのが凄い所なんですね。 イメージとしては、ビー玉を並べた隙間に、表面側からゴムのスーパーボールを押し込んでいる状態でしょうか。傷が付くと亀裂が開こうとするわけですが、ガラス自身が傷の周囲から傷を閉じる方向に 「圧縮」するため、靭性も大幅に向上するわけです。

とはいえ、所詮はガラス。 普通よりは靭性が高いだけで、割れやすいのには変わりありません。耐衝撃を謳うフィルムも出ていますが、薄い以上は気休め程度です。 やはりケース側の保護を意識した方がいいでしょう。
具体的には、角から落ちた時の「力の分散」+「力のかかる速度の分散」が可能なのを選ぶだけで、割れる確率が1桁は減るんじゃないかと思います。「硬さ」と「靭性」は別物なので、薄いケースは傷からは保護してくれても、衝撃からは保護してくれないぞと小一時間。

 

最後に、大昔に書いた奴でも靭性について触れたことを思い出したので貼っておきますね。

www.hageatama.org

あずきバーの硬さと反発硬さ

冒頭のTogetterまとめ内でも単語が出てきている、もう1つの食べ物系硬さネタ「あずきバー」についても触れておきましょう。

nlab.itmedia.co.jp

この記事については、そもそも試験方法が正しくないので意味がない硬さ値に対し、キャッチ―な取り上げ方をしている最悪な例です。

これまた難しい話ではあるんですが、上述したような押し込み硬さ試験は、測定出来ない物質がいくつかあります。 わかりやすいのがゴムの場合です。 弾性物はどんなに硬い物質を強く押し込んでも弾力で押し返して跡が残らないため、計算上の硬さが無限大になるわけです。

同様に、氷などの圧倒的に不向きですね。 硬いものを押し込むため、接触部分で溶解・圧縮が同時に起こり、原理上まともに試験できるわけがありません。

 

blog.livedoor.jp

 各所で話題となっていますが井村屋様のあずきバーを使った実験結果はあくまで測定不能です。ロックウェル硬度計では測定対象物に圧をかけるので、氷が圧をかけると溶ける→圧を緩めると固まるを繰り返して正確な測定はできません。

これについては、ネタ元のブログにおいて補足記事が書かれています。これだから転載系のWEBメディアは(ry

ここからは門外漢による適当な予想ですが、ダイラタンシー現象みたいな一瞬の圧縮に対する硬化の後、金属球による吸熱による融解が進んだ結果、「押し込んだ深さ」から算出されるロックウェル硬さ試験が動的に妙な硬さ値をたたき出したんじゃないでしょうか。

wikipedia:ダイラタンシー

 

www.youtube.com

あずきバーの硬さに対しては補足事項がありまして、なんと硬さ試験関係のメーカーさんによる「きちんと測ってみた」動画が公開されています。 その手法が、ここまで抜けてた説明の補足に最適なので、詳しく解説していきます。


硬さを測る手法として一般的なものは、何度も述べてきたように「押し込み硬さ」です。 しかしながら、その他のものとして「反発硬さ」があります。 最も普及しているのはショア硬さ試験ですが、「硬い物質は反発係数が高い = よく弾む」という、これまた原始的な試験方法です。
表面の跳ね返りから測定されるため、簡便なチェックはし易いものの、測定のバラつきが大きいという欠点もあり、通常は簡易試験という立ち位置です。しかしながら、確かにあずきバーの計測には適しているんですよね。

特に動画のものは、メーカーさんの自社開発による独自の反発硬さ試験機になりますが、微小球を打ち込んでいるだけなんですよ。 試験機を冷やしておけば熱のやり取りも一瞬だけなので無視できる上、掛かる圧力も小指の先程度の微小球1個分。これなら「きちんと」と銘打っても納得の結果です。

興味深いのは、その後に再生される黄銅の硬さに対し、加工して硬化した前後の中間ぐらいの値な点です。 んー、それなりに硬いんだなぁ、あずきバー。

 

おわりに

何も考えずにノリと勢いで書き始めたら収集つかなくなった当記事。 最後まで読んだ方はお疲れ様でした。 普通に生活していく上で活かす機会はないと思いますが、「硬さ」1つとっても、真摯に向き合えばこうなるって事を頭の片隅に入れていただければ幸いです。 少なくとも、宝石の国がさらに楽しく読めるようになったんじゃないですかね???

 

宝石の国(1) (アフタヌーンコミックス)

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話数単位で選ぶ、2017年TVアニメ10選 @hageatama

さあ、来ましたよ恒例行事。恒例とか言いながら、隔年でしか書けていませんし、今年も完全に間に合ってません。

というのも、社畜こじらせて、今この書き出しが12月31日 22時37分。 例年だったら1週間前からアニメを観直しつつスクショを準備したりしながら練りに練るところですが、あえて記憶に頼りましょう。

さあ、選出含めて間に合うか!!!? (※今年は日頃からメモは残してはいます)

 

ノラと皇女と野良猫ハート 第06話 『世界平和』

いきなりレギュレーションギリギリアウトだーっ!!!!

もはやアニメですらないが、一年を通して「話数単位」で頭に浮かんだのはこれしかなかったですもん。 アテレコしてあるし、新たな可能性も提示してきたし、売り方も新しかったし、これはこれで

友人曰く、2ヶ月前に出たエロゲ原作なノラとと2が良かったといっていたのですが、1からの続きって事で完全に積んでおりますorz

 

冴えない彼女の育てかた♭ 第08話『フラグを折らなかった彼女』

これもメタ的ではあるんですが、放映と同じ2017年6月発売に原作の番外編(?)冴えない彼女の育てかた Girls Side 3で、詩羽先輩派の俺ですらメインヒロイン=加藤恵と認めざるを得なくなったタイミングの加藤無双回。ずるくね???

 

 

RWBY 第06話

レギュレーション無ければ5期が刺さりまくったんですが、とにもかくにも本作は入れたいなという思いからパッと浮かんだ画は、ジョーンだったんですよねー。

RWBYが良いのは、バトルではなくて、キャラの掘り下げ方だと思うんですよ。そのなかでもこの6話のように、全員にとってはおかしくても、ピュラにとっては最高のヒーローだって描き方出来ているの、故モンティ・オウム氏よ安らかに眠れって思いになれます。

 

ボールルームへようこそ 第24話 『ボールルームへようこそ』

ハッキリ言おう。ボールルームへようこそが入る事は確定していたけど、どちらかというと額縁回かなと思っていて、2クール目は不満の方が多かったんですよ。敢えて、フラストレーション溜まる構成にもしていたんだと思う。 単純に、悠木碧キャラのめんどくささも好きじゃないですしね。

だからこそ、交わらず、ぶつかりあい、多々良と千夏が「ペア」になる瞬間をこうも見事に最終回に持っていかれると、そりゃもう完敗です。これは、2クールやる覚悟のアニメでしか出来ない奴ですから。

あと、話数単位関係ないですが、本作は歌手としての小松未可子さんの使い方が非常に秀逸で、いいぞもっとやれ。

 

メイドインアビス 第10話 『毒と呪い』

もはや話数単位でどの話を入れるかという作品ではありますが、これは満場一致でこれでしょう。(ホント?)

富田美憂さんの声、当初のキャスティング的には想像より低くて違和感があったんです。しかし、話が進むにつれ、幼さが抜けたこの声の方が馴染んできたところに、この腕折り・失禁シーンですよ。

更に声という観点で行くと、井沢詩織さんという特殊声質の方が人気を得て、ナナチに当ててもらえたという奇跡。

 

この作品特有の、作者さんの性癖がガンガン出ていてヤヴァいところを、容赦なく、むしろ昇華させてアニメ化したスタッフの方々、本当にいい仕事でした!

 

宝石の国 第10話 『しろ』

作品としては第08話だし、投票的にも第08話に集まりそうな気がしてますけど、やはりアニメーションという意味では第10話でしょう。 ホント、2017年になったからこそ出来るアニメが、本気の本気を出した回。

最後2体の絶望感含めて、背筋がゾクゾクしたのはこの回が2017年で最高でした。語るのも野暮。 噛みしめて何度でも観たい。

 

ゲーマーズ 第01話 『雨野景太と導かれし者達』

今年一番持っていかれた初回は、ゲーマーズでした。 あまりにベタで御都合主義な設定で、ああいうオチをされた事が衝撃だったんですよ。 例えばどうやったってミステリ読む時は構えて読んじゃうし、それを構えさせないというのは狙ってやるのはほぼ無理じゃないですか。

即、原作全巻買わせる力がありましたし、そこまでやるか?なめんどくさいドタバタラブコメに魅せられました。 あ、ちなみに私は生徒会長 コノハ派です。 #わかりやすい

 

プリンセス・プリンシパル 第08話 『case20 Ripper Dipper

これも約束された神回ですね。こんなベタなのを入れなきゃいけないなんて、悔しい!

この半年、何度第08話→第02話のコンボをキメただろうか。 普通に第06話とかも入れていいと思うんですけど、ちょっと時間無くて捻りを入れる余裕を剥奪されると、「負けました!」って思いで第08話です。

今考えればわかりやすい構造なんですけど、放映当時は特に深く考察も入れていなかったので、そこからの1話から再視聴が楽しくて、楽しくて。

 

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? 第12話 『世界で一番幸せな女の子 -CHTHOLLY-』

原作初版勢(Kindle版だけど?)なので思い入れがあり過ぎるし、ベタに最終回です。

個人的に、本作は古き良き泣きゲーの文脈という理解なので、自然の摂理としてクライマックス観ながらボロボロ泣いているおじさんが誕生するのはしょうがないのです。

続編「終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?」の捻くれた主人公が好きなので、2期も気長に待っていますね。

 

けものフレンズ 第12話『ゆうえんち』

基本的にアニメは全部観ようと思っている自分ですら、第02話を後回しにしていたくらいですが、ネット上では第03話ぐらいからざわつき始めましたよね。

そして迎えた最終話。あの過剰な期待に対して応えきったあの視聴者全員の一体感は、後追いで観た人には伝わらないナニカがそこにはありました。

ハッキリ言いましょう。アニメ開始当初では完全なオワコンであり、それがここまで伸びたのはたつき監督の尽力であり、それ以上の偶然があったんだと思います。 あの熱狂ありきの選出であり、2期は考えない事にしましょう、はい。

 

 

おわりに

「さすがに山場回や最終回は避けよう」とか、「通しか観ていない奴を如何に選ぼう」みたいな余裕が無くなった結果がこれだよ!!!!!

ある意味、心に刻まれてすぐに思い出せる10作品ともいえるので、これはこれでありじゃないでしょうか。あー、23時54分。ギリギリ間に合った!

クレカを3年ぶりに作ったので、クレカが嫌いって話をする

VISA→MasterCard→JCBと渡り歩いて、AMEX村にやってきました。 ここ6年、ずっとプチ陸マイラー通していたので、またANAの奴です。プロパーは年会費たけぇよ。

インターネットに依存している人生なのでクレカが無いと困ると言えば困るんですが、極力1枚だけの体制を通しています。別にお得さも信用情報にも興味ないので、不便なく使えればそれでいいです。

では、なんでクレカに対して冷めてるのかの理由を整理するため、古傷を抉ってみます。

 

理由①:自分がクレジットカードの勧誘バイトをしていたから

土日だけで不定期かつお高めに斡旋する系の派遣会社に登録していたので、セゾ〇系の勧誘バイトを結構やりました。街角でブース作って突っ立ってるあれです。場所によって毎回カードの種類も変わるので、いろいろと学んだ気がします。
以下、理由にはなってないけど追想。

  • 「このオプションは積極的に勧めろ」、「このオプションは儲からないから説明はそれとなく簡単に済ませろ」みたいな指示が多かったので心が澱んでいった。
  • 電子マネー黎明期に、「ああ、この人はクレカ機能無い奴を作れるのを知らないんだろうなぁ」と暗に気付きつつも幾度となく契約させてしまった苦い記憶
  • マスコットの着ぐるみとか居ると、マジ大人気!
  • 特にnim〇caのあいつは人気あったけど、名前が"フェレット"という力強い命名だったのが強く印象に残っている。
  • 住基カードとか、留学生とかの例外処理が1日1人くらい出て、その度に現場が混乱していたような。
  • あまりに人が来ない日に思わず自分で1枚作ってみたけど、何も益が無かった。

 

理由②:納得いかない形でのブラックリスト入り(?)の経験があるから

10年以上前ですが、未だに納得いっていない以下の流れでメインクレカ巻き込んでの強制解約を喰らいました。

  1. クレカ契約時に、ネット向けの別クレカ番号を付けられるオプションを選択。
  2. 新生銀行を引き落とし先で、サインにて契約。
  3. 印影照合出来ないからと口座の再指定を求められて変更。
  4. 実は「オプション」はシステム上、2枚目のクレカを作ると等価で別審査。オプション側のクレカ契約は新生銀行が引き落とし先のまま通っていた。(らしい)
  5. オプション側も当然使えるわけで、WEBサービス系の定期引き落としで使ったくらいで封印して存在も忘れてた。
  6. 使われてると思ってなくて寝かしていた新生銀行から定期引き落としが続き、口座が空になったある日、引き落とし出来なくなる。
  7. 明細もメインから切り離されてて気付かず、WEB系だからか内部処理がうまくいってなかったのか、電話や郵便的な請求も無く、最終的には数百円が払えずにブラックリスト入り(?)と事後のお電話で判明。抗議も通らず。

請求を把握しきれていない俺も悪いけど、今思い返してもクレカ会社側の非が8割じゃね?
どことは言いませんが、宗教上の理由で三〇住〇V〇SAカード系は永遠に作りません。

 

おわりに

ついでにAMEXの話ですが、何も理解してなかったけど、「使えないケースが多い」では済まない癖の強さがあります。

  1. ゴールドでも限度額20万円スタートとかざら
  2. 原則的に1回払い
  3. 高効率なポイント還元は期待するだけ無駄

なんだこれと思ってたんですが、折り合いつけてみると悪くない運用できそうなんですよね。んで、行き着いたのがこの記事。

https://crefan.jp/review/review_comment?revid=11746

完全に腑に落ちました。AMEXは会員サービスの一環としてクレジットカードがあり、それも仕組み的には後払いのデビットカードみたいなものだ、と。一般的な金貸し的思想ではなく、既存資産に対する立替えなんですね。

会員制としてのサービスだけは手を抜かないから、利用を積み重ねて、その都度電話してくれたら臨機応変に対応し、悪いようにはしないよって発想みたいです。今までも人生でローン組むのは避けてきたので困りませんが、これならプロパーで作っておけばよかったとちょっと後悔してます。

 

電子マネー検討含めて、この辺りは別の記事で詳しくまとめたいですね。

 

将棋界の世代交代と最新戦法から見る羽生永世七冠の凄み

www.asahi.com

羽生さんが永世七冠となったことは、今更でしょう。
その中でこの記事読んで「あ、寝かせていたネタを仕上げなきゃ!」という、誰にも頼まれていない義務感が降ってきました。
筆が乗りまくった結果、万人向け解説は放棄してますので、適宜読み飛ばしてください。

 

20年かかった世代交代

羽生世代とその直下はもう40代後半。年齢的にキツいと言われながらも、第一線を死守しています。 とはいえ、故・米長邦雄永世棋聖が50歳という史上最高齢で名人位を奪取した時にもてはやされた事を考えると、流石に年齢的な厳しさも避けられないでしょう。

 

 

https://witter.com/BigHopeClasic/status/910698520083959808

そして今年9月、とうとう節目の日を迎えました。

20代で名人位を奪取した佐藤天彦名人、そして先日初タイトルを奪取した菅井王位と20代の活躍が目覚ましい昨今。瞬間的とはいえ、レーティング――統計的な実力ランキングでトップ6人が20代で占められたのです。

 

囲碁やチェスなどは20代ですら若いといえない世界ですが、将棋界においては十数年に渡りなされなかった世代交代の波が急激に押し寄せているように見えます。

 

何故、世代交代が起こったのか?

単純な能力の衰えで片付けるには突然過ぎますし、それなら20代だけが伸びている理由としても弱いでしょう。ここで、将棋の携帯中継が始まって以来、全局観てきた自分の肌感覚から、一つの仮説を立てました。

 

"ここ1~2年で定跡の根底の所がひっくり返されて、特にトッププロの多くが得意とする居飛車の定跡形で、ベテラン勢の経験が活きない状況になっているのではないか?"

 

ということで、百聞は一見にしかず。居飛車定跡形の代表的な4戦型(+α)の採用比率推移についてグラフでまとめてみました。元データは将棋棋士成績DBを使わせていただきました。DBの中の人による戦型判断であり、全対局の3~4割は「戦型不明」なのでその辺を差し引く必要はありますが、データとしては十分でしょう。

f:id:hageatama-:20171031113523p:plain

 

 いやー、これ一枚で将棋ファンはニヤケが止まらないっしょ。特に去年から今年にかけての傾向が如実に現れていて、ぞわっとしました。リミッター外せばこれについて原稿用紙100枚分語れる自信あるよ、俺!!!!(※最終的に本記事は原稿用紙20枚分です)

 

とくに2015年から2017年にかけての急激な変化が如実に現れたグラフだと思います。では、戦型ごとに紐解いていきましょう。

 

相掛かり

一番平和なので、サラッと。

数年前活発だった2手目に△8四歩突く or 突かない議論の影響も見られず、10年間ほぼ横ばいでしたが、よく見るとここ2年で採用率が1.5倍に増えています。 △3四歩からの定跡形がことごとく潰されているため、それ以外の変化が求められているのでしょう。

この局面で飛車先交換保留が増えてきた辺りについて書きたいけど、それだけで1000文字増えるので矢倉部分に任せて自重。

 

横歩取り

ピーク時の3分の2まで減少しています。激変のあおりを最も喰らっている戦法と言えるかもしれません。
2010年代に入ってからは、特にトッププロ同士だと右を見ても左を見ても横歩取りという印象すらありました。実際、2015年までは居飛車定跡系の3割程度で安定してますし、序盤の変化の余地が少ない分、課題局面の発生率は非常に高かったと思います。

しかしながら、横歩取りというのは「先手と後手の同意」により初めて成立する戦法であるため、例えば女流棋戦やコンピュータ将棋などでは出現比率が激減します。(よね?)
そこで後述するように、矢倉や角換わりの流行に研究リソースを取られた結果、自然と減っていってるはずです。

一昔前なら上のような勇気流(▲6八玉)とか、斉藤流(△5五角)のような、良い子は真似できない即死トラップ戦法が掘り下げられまくってるはずですが、あまり結論が出ている印象を受けないんですよね。

 

あと気のせいじゃないと思いますが、一時期より△8五飛戦法を見掛ける機会が増えた気がします。母数が小さいのでわからないものの、危険な最新の変化に飛び込むリスクを考えると、△8五飛戦法を選ぶのも合理的と思えます。 時間ができたらこの辺も検証したいところですね。

 

 

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一手損角換わり

角換わりでも触れるので、一手損の方を先に簡単な紹介。
全体のわずか2.4%。絶滅一歩手前まで来てますね。

後述しますが、角換わりの後手番で先攻できる指し方が増えてきたため、わざわざ別の将棋を組み立てる人が減っているんでしょう。 指し方としてマズいわけではないけれど、もはや一部のスペシャリストのみが選んでいるんじゃないかと。

丸山九段のように4手目△8八角成で強制的に自分の土俵へ持っていくのは、棋理の優劣はともかく、勝ちに行く指し方として有効だと思うんですけどね。

 

角換わり

雑な解釈ではありますが、角換わりは

  1. 同じ or 似た陣形に組む
  2. 先手が先攻する
  3. 後手は受け一辺倒になる

という王道の負けパターンを後手がいかに回避するかの歴史と言ってもあながちまちがってはないでしょう。

では、角換わり腰掛銀を軸に、近年の歴史を紐解いていきます。

 

まず、前項の一手損角換わりが一世を風靡したのが2004年頃。 2008年にはデータ上初めて後手の全体勝率が5割を越えたのは有名なところで、それが上述の戦法採用率にも表れています。

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 一方、通常の角換わりは冬の時代で、特に2011年の富岡流で先後同型の角換わり腰掛け銀に危険信号が灯りました。 A級順位戦で富岡流の結論が出た定跡に乗ってしまい、そのまま郷田九段が敗れたのは今なお語られる事件です。

 

そんな角換わりですが、採用比率が4分の1まで増えた2015年が契機だったように思います。 具体的には、後手側から先攻する手段が次々と確立されました。それにより、前述した負けルートに対する先後の立場が逆転したとも言えます。端から端まで語っていたらキリがありませんが、千田六段の2つの偉業にだけ焦点を当てましょう。

 

角換わりが研究合戦というのは変わっていないので、ある意味従来通りではあるんですが、半世紀に渡り結論が出なかった角換わり腰掛け銀同型に対し、そもそも同型になる前に後手が有利になる変化が見つかったのが2016年の夏でした。

上に示す広瀬-千田戦のこの仕掛けが成立しているようで、従来の角換わり同型に組もうとするだけで先手が不利とされるようになりました。伝統の同型はもうプロ棋戦では現れない可能性すらあります。

 

では、この局面を紐解いていきましょう。
まず思想の流れとして、端歩や桂跳ねを省略して後手から先攻という流れが出来てきました。2015年ぐらいからだと思います。そこから後手の先攻策がいろいろと開発されるなかで、千田六段が△6二金・△8一飛型を連採し始めます。

従来の角換わりは、上記の先手のように金を5筋に上がって玉に近づけ、場合によってはさらに玉を固めて使われていました。それを1筋離し、飛車を下段まで引く事で角の打ち込みの隙を消したわけです。当然角換わりですからともに角行を手持ちにしているわけですが、その運用に大きな変革をもたらしたわけです。

さらに特筆すべきは、△3一玉にすら上がらずに△4二玉のまま開戦している点で。木村定跡を筆頭に数十年かけて△2二玉まで上がらずに△3一玉で定跡が固まったというのに、さらに一手省略して先攻を優先しているんですね。

あくまでこれは角換わりの一幕ですが、ここ2年でお互いの速攻策が加速しすぎていて、角換わりが別世界に変貌しています。  

 

 

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あと、最後に「コンピュータ将棋研究Blog」さんばっか貼ってるのの一環で、おもしろい傾向なども。もはや人類では理解すら出来ない強さに辿り着いているコンピュータ将棋ですが、アルゴリズム的な癖なのかもしれないものの、雁木模様を好む一方で、角換わりは避ける結果、さっさと角交換を拒否するようなのです。

私自身の解釈的には、elmoって最終的な勝ち負けを補正項として絞っているため、一直線で序中盤に負けルートへ入りやすい角換わり自身への評価が低いんじゃないかと勝手に考えてます。 ソースも読んでないプログラムの気持ちなんてわかんないですけどね。

 

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完全に蛇足で「ソースも読んでいない」で思い出したので貼っておきますが、最新ponanzaの中の人が教えてくれたので、でぃーぷらーにんぐ部分を一応読んでみました。いやー、パラメータの選択は職人芸だし、あくまでデータ生成部分だしで、全く理解できませんでしたね。まあ、構成的な所がわかるだけでもだいぶ楽しいんですけど。

 

では、最後に羽生永世七冠誕生の対局に触れておきます。

後手が自然に腰掛け銀に構えて、さあジリジリと距離を詰めましょうって局面ですが、ここでいきなり▲4五銀とぶつけていきました。上に貼ったリンク先の▲4五桂跳ねもそうですが、攻めを繋ぐ技術が進んだ結果、無謀とも思えるいきなりの仕掛けでも手になるようになっています。
こんな序盤で▲4五銀が成立するとすると、かなり後手の駒組みに制約を入れられそうですね。

そして何より凄いのは、自身の記録が懸かった大一番で「やってみないとわからないので」とこの手を指せる羽生さんの強さでしょう。渡辺竜王は△6二金・△8一飛型で4筋、9筋を省略しての最新形で攻めてきているわけですが、実はこの2人は先週全く同じ局面で戦っているんですね。後手は後手で自信を持って選んでいるはずです。 それに対し、定説に挑戦する一手で応えられるからこそ、今なお第一線で戦えているんでしょう。

 

 

矢倉

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さて、ようやく本編です。……ここまでが序章???

新人王を連覇した増田四段による"矢倉は終わりました"に代表されるように、矢倉の在り方が完全に変化したのがここ2年です。

居飛車穴熊を中心とした「固い・攻めてる・切れない」という現代将棋的発想の中で「固い」という部分を削って攻めに繋げる風潮が加速化してきています。現代将棋の申し子と言われた渡辺棋王に代表されるように「定跡形でしっかり囲って、それから攻めを繋ぐ」ケースが矢倉でも基本でしたが、ここ半年で矢倉囲いに組みあがる対局が半減どころか本当に稀な領域まで来ました。

 

飛車先不突き全盛時代に名人戦でいきなり▲2五歩を決めた森内九段に何が見えていたのかとか、藤井矢倉や脇システムの再評価なんかまで書き始めたら永久にまとまらないので、重要な3項目に絞って整理していきましょう。 

 

矢倉①:△3七銀戦法の終焉

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2012年――もう5年も前ですか。

当時……というより平成に入ってからは矢倉3七銀戦法が優秀過ぎて、矢倉といったら3七銀戦法の末端まで細かく精査する作業に陥っていました。

その行く末が、なんと91手まで定跡をなぞる領域です。さすがに、「あー、この将棋で矢倉91手組の結論でるな」と夕食休憩前に急いで記事書いた上記のA級順位戦を最後に、「先手勝ち」で落ち着きました。 とはいえ、そうなるとそのルートに突入する前で変化しなければとなり、あくまで▲3七銀に組んだ状態から虱潰しが行われていました。正直、すごいけど観ていてもつまらない!

 

そんな折、とうとう大きな契機が。

▲3七銀→▲4六銀→▲3七桂と好形が通る前提で20年間続いていた矢倉の定跡が、2013年に塚田九段により発見された△4五歩という押し返す手の成立により、全て放棄されたのです。 

この△4五歩反発の成立が世代交代に繋がっているといっても過言ではありません。

 

www.nicovideo.jp(〜13:00くらいからわかりやすい解説)

 

 

矢倉②:居角左美濃

さらなる潮流が、そもそも矢倉という戦法そのものへの反発です。大げさに言うなら、ここ2年程で居飛車の考え方を根底から覆したのが、居角左美濃と雁木です。

 

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まずは居角左美濃から。将棋ファンの度肝を抜いた2015年11月の対局に端を発しますが、「飛車先を切ったのが敗因」ってのがすでに従来の常識からは外れています。 飛車先交換三つの得ありって駒の動かし方の次くらいに習ったのに、交換という行為自身が手の遅れを引き起こしているほどの速攻策が成立してしまったのです。

 

上の対局の半年前、Ponanzaの作者 山本氏はこう言ってます。

 

 

この辺りに関しては様々な意見があるでしょうが、ここ2年で先手が悠長に矢倉を組んでいると、後手からの早仕掛けで攻め潰されるのが当たり前の時代がきてしまいました。とにかく急戦ーー速攻策が優先されており、矢倉をきちんと組み上がる事は稀……というか全く見かけなくなりました。

  

yaminomabot.hatenadiary.jp

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それ以降、先手側からも居角左美濃を押し返す手段は出てきてはいるのですが、そもそも居角左美濃を避けようと、矢倉の開幕が攻めの争点を与える▲6六歩ではなく、▲7七銀に変化しました。
20年前に先見の明がありすぎる大天才が、矢倉の序盤を究極的に突き詰めると▲6六歩か、▲7七銀かみたいな検証をしてからの▲6六歩に集約された定跡に揺り戻しがきているのです。

変わりゆく現代将棋 上

変わりゆく現代将棋 上

 

 

矢倉②:雁木

出来の悪い矢倉の兄とかハチワンダイバーで言われてた気がする雁木囲い。(探したけど出てこなかった) 二こ神さんが古くて泥臭いキャラとして雁木を愛用していた時点で、ほんの1年前までの雁木のイメージは推してはかるべしです。

プロでも、一部の力戦系を好む棋士以外でこれを指しているのは見たことなかったのですが、ものの半年でA級順位戦で相雁木まで出てくる時代になろうとは……

最初に出した戦型推移のグラフで雁木は矢倉とカウントされているようですが、もはや矢倉の早仕掛けなのか、雁木なのか、分類する方が野暮な状態になっています。正直、雁木戦法については全く理解できていないので、表面的な話になってしまうのでご了承願います。ここ半年でいきなり世界の根底から覆されても、アマチュアは飲み込めませんって!!!

 

オーソドックスに組むとこんな感じですかね。特徴としては、左銀が▲6七銀となっているところです。駒の連結としては矢倉に分がありそうですが、▲7七桂から左桂が活用しやすく、逆に後手の△8五桂に銀が当たらない。そして角交換しても打ち込みのスキも小さいため、攻めっ気を出しやすいって所でしょうか。 その観点でいくと、何よりも組むのが早いため、昨今の矢倉速攻傾向とも完全に噛み合ったのでしょう。

元々はponanzaを中心にコンピュータ将棋が得意としていたとされますが、それもわかる気がします。自分が真似しようとすると、歩が前面で向かい合いすぎてるのに発展性がなくて手が出にくいままズルズルと固められそうな気しかしません。これの右銀は使い道ないでしょ……
その点、攻めを繋ぐのがうまいponanzaなどは、一気に攻め潰してしまいそうな気がします。

実際のところ、雁木が多く採用されているのは単なる流行だと思うので、来年の順位戦では落ち着くと思うんですけどね。
△5三銀右急戦みたいなのが主流にならなかった理由を邪推すると、指せたとしても序盤から瞬発力を要求されるため、指すのが大変ってのはあると思うんですよね。 じっくりとした定跡形は、定跡抜けるまでは大きな差が付かないので、時間や体力残したまま中盤迎えられますし。
プログラマ35歳定年説の是非はともかく、最新の動向にキャッチアップし続けるつらさというのは避けられませんし、そういう意味でも40代後半で喰らいついていくのはそれだけで大変なことはわかります。

羽生さんも当たり前に、竜王戦第2局で雁木を選んでますが、その中にも現代将棋のエッセンスが入っている様子を片上六段がブログで解説されているので、是非ご一読ください。

 

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おわりに

読み返すと、プロ棋戦の話題なのに、@suimonとデレマスの記事ばっか貼ってますね(笑)
ホント、インターネット上の研究・解説には本当に助けられてます。

 

さて、私が真剣にプロ棋戦を見始めたのは2010年頃ですが、当時はちょうど梅田望夫氏が「ドッグ・イヤー」ーー犬にとっての1年が人間にとっての7年に相当するように技術の進歩が急激に進む現象を、将棋界に当てはめて語っていた頃です。

あれから7年。その理屈でいくと半世紀が経ったわけですが、その中でもここ2年は7倍では効かないくらいの急激な変革が訪れている事は理解してもらえたと思います。

だからこそ、そんな時代に永世七冠を達成した羽生さんの恐ろしさをまざまざと見せつけられた思いです。昨日の序盤、私でもわかる斬新さでしたしね!

はー、趣味として将棋観戦を選んだ結果、ここまで満たされるとは夢にも思いませんでしたね。自分の余生がどれだけ残っているかはわかりませんが、次の永世七冠を拝む事は無理だろうなぁ。

 

羽生善治と現代 - だれにも見えない未来をつくる (中公文庫)

羽生善治と現代 - だれにも見えない未来をつくる (中公文庫)

 

 

2017年も安定して使い続けているもの7選@hageatama

2017年も安定して使い続けているもの10選 - QuzeeBlog@Hatena

いい観点。俺もこれで書こうかな。

2017/12/03 19:11

b.hatena.ne.jp

例の記事の最初のブクマとしてこう書いちゃったので、急いで書きました。
いやー、自分で言うのもなんですが、いろいろとアレなものを買っているのに、常用しているガジェットがKindle Paperwhiteだの、GRだの、ANKER製品だので、捻りがなさすぎて絶望しましたね。

しょうがないので、部屋を眺めて目に付いたのを素直に並べました。絞り込み損ねて逆に10選にはならなかったけど気にしないでください。

 

YSP-2500

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20代にイヤホン・ヘッドホンへだいぶ投資した結果、「耳が馬鹿な上、高音質の音楽を聴かない」という悲しい実態に気付いた私。 どっちかというと、気軽に音が鳴らせるとか、サラウンドがしっかりしてるとかの方が求めていた機能でした。

サウンドバーなYSP-2500ですが、HDMIセレクタとして便利なんですね。AVアンプのような場所を取る事もなく、ややこしいセッティングも必要なく、「とりあえずこれにHDMIで入力しておけばOK」という運用をコンパクトに実現できており、非常に快適です。

 

 


日立の扇風機

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扇風機みたいなコモディティ化しきっている白物家電はどれも変わらないだろと思ってましたが、ふとした勢いで3年前にちょっと良いの(といっても6000円くらい)を買ってみたら、結構違いがあってビックリしました。 今までの安物はギシギシいってたし、風は固いし、モーターでかいしで、軽自動車と2.0Lカーくらいの違いはありました。やるな、日立。
なお、炊飯器については実家が高いの買ってたので使ってみたけど差がわかりませんでした。 どちらかというと定温調理のために今は亡きSANYOのマルチ調理機能付きの方が欲しいです。

 

日立 扇風機 風量4段階 リモコン付き HEF-120R

日立 扇風機 風量4段階 リモコン付き HEF-120R

 

 


ポールハンガー

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誕生日にポチってもらった奴ですが、2000円程度でQoLがだいぶ上昇しました。
当初は収納としてもオブジェとしても、必要性には懐疑的だったんですが、気付いたら手放せなくなっています。
コートやジャケットを掛けるだけならクローゼットで十分なんですが、カバンと帽子の定位置としての働きが超優秀ですね。 部屋の中で散逸する事が減り、出掛ける時にもバタバタするのが無くなるため、大変助かります。

 

不二貿易 アンティークコートハンガー 3段 高さ183cm 天然木 ブラウン 27872

不二貿易 アンティークコートハンガー 3段 高さ183cm 天然木 ブラウン 27872

 

 


竹シーツ

全然市民権を得てませんが、何故か実家ではずっと使っているため、これ無しでは夏を越せない身体になっています。写真貼らないと伝わり辛そうですが、さすがに仕舞っているので勘弁願います。

い草のシーツなどと違い1つ1つのピースが大きく、物理的にマットレスから切り離されるためか、クーラー効かせると寒くなり過ぎるくらいに涼しく過ごせます。
欠点は、繋いでいるチューブが2年ほどで劣化して腰などの沈むところから千切れていくため、消耗品として割り切るしかないところでしょうか。 割と重い上に、置いていない or サイズ選べないホームセンターもありますが、Amazonは全体的に高いです。

 

大島屋 シーツ 竹 ひんやりシーツ S ナチュラル 約90×180cm
 

 


ポメラ DM5

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言わずと知れたポメラさん。
DM100も持っているのですが、意外にも稼働率は最廉価版のDM5のが高いという現実。 というのも、何とかポケットに入るサイズなので業務上のちょっとしたテキスト生成や議事録取りに使いやすいからです。
特に後者は有効で、御客様相手とかでも、ノートPC広げるよりも「議事録取ってます」感が強く、話のネタになる事もしばしば。 業務で自分の電子機器使える人限定ですが、刺さる人には本当に便利な文房具なんですよ。
DM100については「テキストを書こう!」と意識する時に使うため、良くも悪くも稼働率が下がっていますが、こちらはこちらで使っています。

ただ、DM5はQRコードでのテキスト取り出しが出来なくてモタモタするので、DM25買おうか真剣にお悩み中です。

 

キングジム デジタルメモ ポメラ DM5  クールブラック

キングジム デジタルメモ ポメラ DM5 クールブラック

 

 


KOKUYOのL字デスク

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広い天板のデスクというのは、それだけで正義です。 解像度もサイズも上がって、仮想のデスクトップは広く快適になる一方なのに、実際のデスクが狭いままでいいわけが無いじゃないですか。
ぶっちゃけ、一般家庭に置くサイズとしては大きすぎますが、デメリットを補って余りあるメリットの前には些細な事です。

オフィス用のコクヨ製品なので天板も傷みづらいし、剛性しっかりしてるのしで、しかも中古オフィス用品として買ったので案外お安いというパーフェクトな逸品。

うちのブログでブツ撮りしてる時は、背景にもなるという便利グッズです。

 

Kindle Paperwhite 3G+事故保障プラン

Kindle Paperwhiteに3Gオプションと事故保障プランつけて、雑に扱いまくるのが一番楽な運用です。こんな私が言うんだから間違いありません。

Kindle Paperwhite 用 事故保証プラン (2年・落下・水濡れ等の保証付き)

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おわりに

人柱で銭を失うのが生きがいみたいなところある私ですが、割とトゲのないないように落ち着いていて拍子抜けしましたね。ちなみに、他にはIKEAの木製ハンガー、マガジンラック、シリコンスチーマー、ドルツなども候補に挙がりました。んー、普通だ。

そこで理由を考えてみたんですが、3年前から自分の部屋をホームシアターにしているせいで、自然と物を減らす方向にシフトしているのが大きい気が。みんな、断捨離したいなら家にホームシアターを構築しましょう!

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