第3回将棋電王戦 第1局のお昼段階解説的何か

菅井五段の5筋位取り中飛車に対し,習甦が比較的古い陣形で迎え撃つ形になりました。この「古い」部分を少し整理しておこうと思います。

 

まずは糸谷六段がコメントしているここからでしょうか。 本局の先後を逆にした21手目▲2八玉までです。こう見ると,ゴキゲン中飛車の少し古いな形に見えますね。

また,以下は▲3六歩▲3七銀型の超速が発見される前に有力だった2枚銀急戦の基本形になります。2005年名人戦 森内-羽生戦などが有名例ですね。

▲4六歩▲4七銀型で5筋を受ける形で,▲2五歩を保留して玉を固めつつ二枚銀を繰り出す感じです。2つを比較すると,本局はかなり中央に駒を送り込めていて,振り飛車が得しているように見えます。

とくに,振り飛車側が位取りを支えて▲5六銀に出来ているのが大きいんじゃないでしょうか。この5筋位取り中飛車は非常に優秀なので,居飛車側が避けている形なのです。

 

類型となる1994年名人戦第一局 羽生-米長戦です。先手は高美濃囲いでしっかり上部と中央に手厚く,左辺はすっきり。 かなり振り飛車の理想型ですよね。 後手は角の活用が難しく,玉も金銀で固めている割には固くないですかね。

この将棋,現代将棋を解説した名著「最新戦法の話」ゴキゲン中飛車の章で1ページ目に取り扱われている,歴史的一局なんです。 20年前,名人戦の先手で飛車を振ること自体が「けしからん」と言われていた時代に,羽生さんが優秀なものは何でも採用するという現代感覚の風穴を開けたわけです。

中央に位を取り,すべての金銀が連結した美しい陣形ですね。羽生は5筋位取り中飛車の「戦法としての優秀性」を再認識させたのです。

(中略)

さてこの後,この5筋位取り中飛車がどうなったかと言えば,実はあまり指されていません。5筋位取り中飛車の優秀性が認識された結果、▲7六歩△8四歩▲5六歩に△3四歩▲5五歩と進むことが少なくなり、代わりに△8五歩▲7七角△5四歩と進むことが増えたからです。

「最新戦法の話」勝又清和六段 P121

 

午前終わった時点としては有利不利が明確に出るわけではないが,振り飛車側としてはこの局面から確実に始められるなら,100回やったら90回は選ぶくらいに理想的な展開に見えます。

このまま菅井五段押し切れ!!!