「あえて言わせてもらうならば――“悲劇” へようこそ、だ」
ノベルゲーから選択肢すら排して電子紙芝居に特化する最近の風潮も一つの方向性だとは思いますが,やはりゲームである以上はゲームだからなしえる要素こそ,重要視すべきだと考えています.
自分がかねてより一連のANOSシリーズが最高に好きだと叫び続けていますが.これは,テキスト主体で構成されるノベルゲーの中でゲーム性を追求した極北に位置する作品だからです.
同様に,YU-NO.Ever17,シュタゲが好きですが,これも書籍では限界がある周回プレイを前提としたループ物にこそ,ノベルゲーの醍醐味が詰まっているからです.
そして,前述したANOSやYU-NO,Ever17,シュタゲなどのテイストがぎっしり詰まった作品がひっそりと世に送り出されていました.先月末発売されたエロゲ『古色迷宮輪舞曲』です.
本来は,ここ5年ぐらいエロゲなんて年一本ペースの自分が手を出すほど有名な作品じゃないんですが,自分をよく知った友人から「おい,騙されたと思って買え」というメールが届いたのでノリで買ってみました.それが,まさかここまで大当たりとは!!!!
『古色迷宮輪舞曲』は,主人公の人生があと1週間で終わる運命だと告げる少女と出会い,その1週間をループし続けるという,ある種ありきたりな作品なんですが,そこに含まれる各種要素がいちいちグッとくるんですよ.
- ANOSやYU-NOのようにシナリオや世界観に食い込んでいるセーブ機能その他のシステム
- 古式豊かなキーワード収集→使用なADVシステム
- いかんともしがたい理不尽な初見殺し
- ループ物特有のカタストロフィへ向かう爽快感
- 本格ミステリのような数々のギミック
正直なところ,売れ筋の本流になるとは思えない要素ばかりです.
単純に減点法で付けちゃえば,理不尽過ぎる割におもしろくない運命量システム,無駄に多くてイライラするキーワード,一歩間違うと取り返しが付かないオートセーブ仕様など,ゆとり世代ならディスク割りかねない出来です.例えば・・・・・・
- 紅茶をティーカップに注ぎ損ねただけで,その場にいない幼馴染みが死にました.さらに,やり直そうと同じシーンに飛んだら,今度は飛んだ反動で主人公が死んで初日からになりました.
- 1つミスをしただけで進行度が50%以上巻き戻ったこともありました.MYエロゲ史上最狂のBADエンドですね.
- 「ぬいぐるみ」を選ぶべきところでぬいぐるみの名前を選んだら不正解判定で正ヒロインが即死したときには完全にクソゲー判定でした.
しかし,それが何故かある種の味として肯定的に受け止めちゃってるから不思議です.言葉少なに,とにかくやれって言ってきた友人の気持ちが今ならよくわかります.これ以上言っちゃうと作品の魅力が半減するタイプなんですもん.
これはもっと評価されるべきです.まさか,このご時世に90年代テイストすら感じる良作に出会えるとはなぁ.個人的には傑作の域にすら踏み込んでいます.一周終わって一番最初から読み直してますけど,最初10分のプロローグがこんなに意味深い物だったんだと噛みしめている最中です.なんて,内容の濃さなんだ.
あぁ,願わくば1人でもいいから,こんな拙い説明に心を動かされて,プレイして良かったと思ってもらえますように・・・・・・.
古色迷宮輪舞曲~La Roue de fortune~ (通常版)
- 出版社/メーカー: ヴューズ
- 発売日: 2013/09/26
- メディア: Video Game
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