スキャン代行業者提訴に付随した作家さんの会見内容にぐんにょり

この度,スキャン代行業者に対して著名なベストセラー作家の方々7名が連名にて提訴しましたが,読んでて悲しくなった一方で,ネット上の批判ともちょっと違う感想だったので,つらつらと書いてみます.まず,見かけた論調とそれに対する自分の意見などからですね.

電子書籍で売らないからだ
現状,コスト回収すら難しいレベルでしか売れないし,今の出版社がやってるやり方では統一された汎用性のある形式での配布なんて望めないので,売られたからって買わない.当面は無理ですよね.
裁断なんて再販制度の返本で山ほど出てるだろ
本質的には,単に裁断された本を見たくないって言ってるわけではないと思うので,批判の仕方が少しズレてると思います.「なら非破壊ならいいのか?」に対する返答は聞いてみたいけど.
スキャン代行業者が違法なのがおかしい
そこは裁判で明らかになると思うけど,現行法じゃ自ら複製しないと違法ですよね.自炊する手間で権利を得ているみたいであほくさいけど,自分でやるから自炊です.

さて,そんな中で自炊やってるオイラが会見から感じ取ったものというのが『法律的に突っつく余地があったら,本を山ほど買うことを日常とし,5万円以上の投資と多大な時間を費やしてでも本を快適に読みたいという自炊ユーザーを相手に訴えかねないよね?』って話です.

訴えそのものは自炊代行の是非なんですが,上記の記事の会見から受け取れる主張として,『裁断された本など正視に耐えない』,『本の尊厳を守る』,『もうちょっと本を愛して下さい』という感情的な部分を持ち込んでて,これは訴えたい業者だけに限らず,自炊ユーザーに対しても適用できる批判内容です.なんかこうなると,代行かどうかとかどうでもよくて,自炊って行為とそれを望む人たちに文句付けたいだけなんだろうなぁと…….

ここからはちょっと推定ですが,月に読む本の冊数が1冊以下だったり,読んでも図書館やブックオフみたいな人で溢れる中,自炊ユーザーってのは紙ってデバイスの問題点に日常的に悩まされてるレベルに紙の本に触れてるから自炊するわけで,その層は確実に作家側に直接金落としている購入層だし,本が好きな連中でしょう.自分も自炊やってますが,本の裁断に何も感じていないわけはなく,当然裁断に対する苦悩だってあるし,それを補ってあまりあるくらい自炊による電子化にはメリットがあると思ってやっています.それを,自炊代行業者への訴えと称して,作家側が「自炊そのものが本の敵だ」という意見をアナウンスされると,悲しくなるわけですよ.

もちろん一方で,大沢さんの『これからの電子書籍普及に際し,海賊版対策は重要』という主張はわかります.それでも,自炊代行って行為に対する訴えで勝訴して「ほら見ろ,自炊は悪だ」とかいう風潮にならないかは心配です.

というわけで,新しい概念で文壇を切り開いてきた方々が感情論で読者の行為を否定する様は見ていられません.たぶん,ここまで書いてきたような考えがあるという事すらわからないんでしょうね.それで裁判してる余裕があるなら,今後の電子書籍移行で新たな読者層切り開く方にリソース割いて欲しいです.こうなると,Amazonがさっさと大規模参入して,原告側がこんな裁判間違ってたと自覚するほど.出版界掻き回してくんないかなぁとか思いますよ.外圧無いと動けないくらいに余裕の無い業界でしょうけど,たぶんその外圧はすぐそこまで迫ってるんじゃないですかね.

微妙にはてブからの流入があるみたいなので端的に意訳しておきますと,CDのMP3化を完全否定で通してしまうと消費者もクリエイターも不幸しか生まず音楽業界の二の舞でしょ?って事です.特に,本の場合は,MP3化するのに買ったCDへ物理的に損傷加える上,データ化に手間や時間もかかるわけで,わざわざそんな事やるのは相当音楽好きな奴らだぞ,と.まあ確かに,違法コピーの温床でもあるんですけどね.それでも,MP3化を代行している業者への訴えという名目でMP3化そのものを叩くのってなんかズルくね?