ろくごまるに作品の電子化がめでたすぎるので「食前絶後」を全力布教です。

 

小説、特に新人賞作品に求められる要素とはなんでしょうか。 表現力。構成力。キャラ作りの巧さ。オリジナリティ……etc. 否。「圧倒的な個性」だと私は考えます。

そして、私の辞書で「圧倒的な個性」と引くと出てくる作品こそ「食前絶後」です。

 

32歳の私ですが、なんだかんだで人生で読んだラノベは1000冊を優に超えているでしょう。これだけ読んでいると読んだことすら忘れている作品も数多ある一方で、食前絶後のインパクトだけは18年経った今でも失われる事はありません。

 

それにはソボロの風味すら残っていなかった。ソボロが巻き起こせる不味さではない。 恐怖小説の大家、ラヴクラフトならば『ああ、それは名状しがたき味をもって私の薄灰色の器官に忍び込んでいく』と表現したかもしれない。 だが俺はラブクラフトではなく北浜雄一なのだ。 表現して見せよう。 徳湖のソボロは、『さっぱりとしたアスファルト』もしくは『天津甘栗を作る機械の中で、栗と一緒にぐるぐる回っている石を柔らかくした物』の味がした。

などなど、この世に非ざる味により人間の未知なる能力を引き出す技術「調味魔導」。 その正当継承者争いに巻き込まれた幼馴染とともに『放課後の教室で巻き起こる血で血を洗う、ちょっぴり死の香りが漂うジェノサイド』に誘われる北浜雄一。歯を食いしばって弁当を完食するんだ、大阪府H市の全五歳児のために!!!

 

 

そんな「食前絶後」の電子版が昨日発売になりました。

 

 

ここまででお気付きの方もいるかもしれませんが、電子化の一部始終はカクヨム連載の実録ホラー『カドカワ 富士見と独占契約したけど本が出ないハートフル物語《ストーリー》』で晒されてたアレです。 あんなおもしろいプロレスを狙って仕掛けられる作家さんの作品がおもしろくないわけがないでしょう。

ファンからは「ろくご節」と称される、シニカルかつニヒリズムに溢れた文章の一端に皆さんも触れているわけですが、それが粗削りのまま1冊完結で濃縮された作品こそ「食前絶後」です。 パクチー山盛りとか、ブルーチーズのような「クセの固まり」のような好みの分かれる奴ではありますが、口にあえば一生の味となるでしょう。

 

一方、あまり個性的なのが得意でない方は同作者の長編「封仙娘々追放録」をオススメします。

こちらは毒が抑えられて順当な傑作なのですが、こっちはこっちで言いたい事が多すぎて話は割愛させてもらうしかありません。 ろくごまるにファンは、忍耐強いんやで、マジで。 なろうもいいですが、「桐咲キセキのキセキ」2巻をあと5年はお待ちしていますからね???