『ルテラ・サーガ』という未完の叙事詩に酔うのです!

Kindleは購入時に1-Click強制なため、カートに入れる感覚で値段も商品説明も見ずに「この商品を買った人はこんな商品も買っています」などからポチポチしています。Wishlistに入れるだけのつもりが間違って買った本も片手じゃ数えられません。
そんな一期一会もKindleの魅力だと思うのですが、今日紹介する本もそんな出会いだった1冊です。

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本書の出自は、小説には力を入れていない中小出版社から細々と出ているシリーズです。作者お手製の公式サイトも更新が放棄されており、これまたお世辞にも人気がある状況とは言えません。Kindle化というステップが無かったとしたら、永久に読む機会には恵まれなかったはずです。 しかし、これが読んでみると琴線に触れまくる! こういう出会いがあるからこそ、Kindle漁りは止められんのですよ。

 

創世の時代(神話期・∞~カルデリア歴0年)

原初の混沌の中で、元々このルテラ空間にいた魔神と、外より侵入してきた四体の竜神との戦いがあった。魔神を滅ぼした竜神達はそのままルテラに留まり、世界を想像した。この時魔神の思念は時空間に飛び散り、七つの異なる時代に分かれて転生する。

何が素晴らしいって、オープニングから『サーガ』の名に恥じない大風呂敷なんですよ。 冒頭から、何千年にも渡るルテラの歴史の時代区分解説が続くのです。もちろん、オリジナルの世界地図も標準装備です。
作品内容は、デルフィニア戦記とかグイン・サーガアルスラーン戦記などに類するハイファンタジーの一大戦記譚なのですが、こうも作法に則って重量級設定に挑戦する姿勢だけでも滅多に出会えるものではありません。

要するに、こういうところにグッと来る人は是非読んでほしいのでKindleの試し読みを御一読くださいな。 ここで惹かれない人は時間の無駄でしょう(笑)
最近、文字通りライトな異世界ファンタジーが増えて辟易しているようなおっさんホイホイです。

 

本作は主人公ギャメルが剣闘場へ現れるところから物語は幕を明けます。
ギャメルは、身長9フィート(2.7m)にして、肌は漆を塗ったように黒い、異様な風貌の持ち主。そして何より、額から三本の立派な角が生えた「有角人」という異種族の出となります。
彼は戦い続ける事13年、500有余年の歴史を持つマウア帝国を滅ぼし、故国トリテアを統一する事が冒頭に史実として提示されているわけです。ね、浪漫詰まってるでしょ?

 

作風自体は世界設定の重量感と比すると非常に軽く、1990年代前半の角川スニーカー文庫を彷彿とさせます。 読みにくさは皆無ですが、むしろ軽すぎる感も否めません。 まあ、田中芳樹に慣れている皆々様なら大丈夫だと思いますが。

 

惜しむらくは、大作の例に漏れず全く完結する気配無く、刊行がストップしている点ですね。
最新刊となる4巻は、主人公ギャメルが全く出てこないままさらなる風呂敷を広げているのですが、それが畳まれる気配はありません。  嗚呼、惜しい。しかし、それすらも味だと思ってしまうのは毒されているのだろうか(笑)

願わくばこの記事をきっかけに10万部売れて、即続編が出る展開を期待します。(無理)

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