『AFURI』の商標騒動を掘り下げた1万文字

追記

afuri.com

ラーメン屋側の正式なアナウンスが来て、いろいろと新事実が出てきました。私が追加更新する余裕がないですが、当記事の主張が強化されただけなので、本文の「両者の言い分+α」のところでこれも読んでおいてください。

 

 

※当記事は長文になったため、吉川醸造株式会社を「酒造」、AFURI株式会社を「ラーメン屋」と敬称抜きで表記しています。

はじめに

今回の件、「老舗酒造へ、意識高い系ラーメン家が一方的に難癖付けた」という構図と思われたところから始まって炎上してますが、素人なりに今回の案件は一通り調べ終わっての私の結論としては「90:10のレベルで酒造側の方が問題」となったので、その辺を書いていったら1万文字になりました。

もちろんどちらが正しいとは一概に言えないからこそ係争になるわけですが、少なくとも現段階でラーメン屋側は一方的に非難されるべき立場ではないぞ、と。

私の立ち位置表明とか

ラーメン屋側の仲間か?とか思われるのも心外なので、私の立ち位置などを先に書いておきます。

  • カップラーメンを一度食べたくらいで、AFURIラーメンに思い入れとかもは全くないので、お気持ち擁護する気はありません
  • 研究開発やってる身でして、特許とか商標知識からは逃げられなくて知識淹れてるだけの素人
  • 可能な限り、客観的に評価できるように各種リンクは張り込んでいくつもり
  • 土日お出かけなので一気に書いたから読みづらいかも……

両者の言い分+α

まずは既存情報まとめましょう。以下の3つ読んでおけば十分でしょう。

kikkawa-jozo.com

news.yahoo.co.jp

www.facebook.com

 

ラーメン屋側の社長弁明コメントは、これはこれでお気持ち表明多すぎて冗長なので、私の方で要約させてもらうとこんな感じです。

  • AFURIブランドとしてラーメンに限らない様々なプロジェクトを走らせており、必要な範囲で商標を取ってる。商標もタダじゃないし、商標ゴロみたいなこともしたくないから無駄には取ってたりはしてない
  • 海外11店舗展開で、居酒屋スタイルの店の出店もしており、その中でAFURIラベルの日本酒なども提供している
  • 特に海外展開ではAFURIが全面に出てしまう以上、吉川醸造とは雨降の読み方を変える、タッグを組んで仕事するなどの複数の提案をして協議を重ねてきたのに平行線で終わった

では、これを踏まえて検証していきましょう。

両社の情報+α

吉川醸造

  • 1912年創業
  • 所在地は神奈川県伊勢原市神戸
  • 創業当初は味噌や醤油なども造っていたので社名が"醸造"とのこと
  • 2020年に不動産系などの多角経営やってるシマダグループに買収される

AFURI株式会社

  • 2001年創業。AFURIとしては2003年から。
  • オフィスとしては、神奈川県厚木市と、渋谷区恵比寿の2拠点
  • 創業自体は"ZUND-BAR"という店名で、今も阿夫利山(大山)の麓で本家として営業中
  • コンビニでカップラーメンが定期的に出るくらいには有名店
  • 国内16店舗に海外4店舗。ただ、別形態も含めると海外11店舗らしい?(未確認)

阿夫利山

  • 正式名称は『大山』
  • 通称として、『雨降山』が転じて『阿夫利山』と呼ばれるようになった
  • 住所的には神奈川県厚木市……と思ったら、厚木市、秦野市、伊勢原市に山頂で三分割されてて、下記神社は伊勢原市とのこと
  • 西側にヤビツ峠
  • 麓から山頂にかけて『大山阿夫利神社』の各社が点在
    大山阿夫利神社
    大山阿夫利神社

 

両社の距離は、ZUND-BARからだと車で15分、AFURIの厚木オフィスからだと車で20分で、阿夫利山に近い地場企業といっていいでしょう。少なくとも、土地に縁のない第三者が勝手に商標取ってた事例ではないかと。

 

追記 : 神社側の伊勢原市が一番地元意識が強いので、そもそも隣の厚木なラーメン屋への反発はある、と。なるほど(下部コメ欄参照)

創業場所ままだったら阿夫利山麓と言っていいとは思いますけど、その辺はさすがに理屈じゃないよな,と。

www.syohyo-jp.com

ラーメン屋の方は"阿夫利"を利用しているだけにしか感じられないとかいうお気持ち先行の意見も見掛けましたが、そもそもずっとロゴに阿夫利山の意匠を盛り込んでやってきていたり、大山阿夫利神社でもイベントで出張営業出していたりと、十分に地元企業として浸透しているように思えます。

 

 

j-platpat

ちなみに、私の認識がどこまで意味あるのか分かりませんが、家からは地平線に阿夫利山が見える程度の神奈川県藤沢市民だったことあるのに、阿夫利山の事は今回初めて知りました。山としてはその程度の知名度な気がします。ヤビツ峠をドライブしたことはあるんですが……

問題の切り分け

  1. 先願主義・先使用権
  2. 商標自体の妥当性
  3. "雨降"と"AFURI"が商標として類似か
  4. 地名を商標として取得し、その権利を行使する行為

今回の問題は大きく分けてこの4つと考えられるので、1つ1つ切り分けて考えましょう。

 

①先願主義と先使用権

もちろん、これが元で星の数ほどのトラブルが産まれているわけですが、日本がこの原則を採用しているのにも深い深い理由があるので、どういうものかだけ覚えておけば十分です。

  • 「(場合によっては無関係な第三者だろうと!)特許庁へ先に商標の手続き(出願)を始めた方が権利を持つ」(先願主義)
  • 「出願手続きの前から他の人がその商標を使用していた場合は、少し配慮してもらえる」(先使用権)
  • 肌感覚とは合わないものの、先使用権を持っていても、圧倒的に先願主義側の方が有利

つまり、日本のビジネスルールとして「自分のブランドに関してはちゃんと出願しないと守られないぞ」が基本中の基本です。その前提で、今回の件の時系列を見ていきましょう。

 

吉川醸造が老舗酒造って事で初手から勘違いされてそうですが、吉川醸造が2020年にシマダグループという不動産系の多角経営企業に買収されてそちら側から社員の方が一部移っており、2021年に『雨降(AFURI)』という新ブランドを立てたという流れです。古くからある銘柄を使うな!と言われたわけではありません。

雨降立ち上げ時のPRTimesの記載などからも読み取れますが、買収元であるシマダグループによるリブランディング戦略と思われます。これ自体は別に悪くないんですが、この時点で商標の読みが被ったブランド立ち上げてる時点でかなりのダークグレーなんですよね。すべては、この時点で酒造側が商標をちゃんと調べず、危険な橋を渡ったが故の騒動だと思います。

あと、『雨降(AFURI)』は「最初から海外向けを意識した売り方」であり、「銘柄ではなくブランドそのものとして売ろうとしている」、「AFURIのアルファベット表記もセット」なのも、競合メーカーとしてのラーメン屋側は無視できなかった部分と思います。

shimadahouse.co.jp

prtimes.jp

 

時期 実施企業 出来事
2010年3月 『AFURI』の商標出願(商願2010-022280)
2019年4月 『AFURI』で酒を含む区分の追加出願(商願2019-058625)
2021年1月 『雨降』の商標出願(商願2021-009325)| 
2021年4月 新ブランド『雨降(AFURI)』を発表
2022年8月 『雨降』の無効審判を請求。2023年8月現在『雨降』のステータスは「存続-登録-取消/無効審判中」
2023年3月6日 『AFURI\アフリ』で別の商標として再出願(商願2023-23182)
2023年3月14日 『§雨降∞AFURI』で出願(商願2023-32269)
2023年5月 2019年出願分の『AFURI』に対し無効審判を請求。2023年8月現在『AFURI』のステータスは「存続-登録-継続」

整理すると、すべてにおいて酒造側が後手後手であり、酒造側が「我々が先だった」と言える余地についてはほぼ無さそうです。後述しますが、2023年3月の両社の動きは熱いですね。
また、少なくとも酒造側は2023年時点で弁護士を動かせているということは、自サイトでのアナウンスは「小さな酒蔵が、ある日突然理不尽な要求突きつけられて法的にどうしていいかわからずに出した」パターンなどではなさそうです。

(なお、無効審判担当した弁護士Aさんがシマダグループ本体の案件取り扱ってる方なのか調べようとしましたが、調べ方が分かりませんでした……。不動産案件扱ってる強い方を紹介されたりしてないかな、と)

 

この項をまとめるとすると、先願・先使用それぞれで酒造側が権利主張するのは厳しそうです。

 

②商標自体の妥当性

ラーメン屋が酒類の区分で商標出しているのはどうなんだという話は当然あると思います。それについては、本日出たラーメン屋側の社長コメントにより、海外で居酒屋スタイルも含めて11店も出店やってて、そちらではAFURIラベルの日本酒提供しているとのことでした。

確認すると、確かに2018年時点で海の向こうにてカップ酒をデザインしている記事が出てきます。同じ飲食系だし、この記事の翌年2019年に酒類として商標を抑えていたのは不自然ではないと思います。

併せて、これを探すために"AFURI sake"でGoogle画像検索すると、雨降が並ぶ中にこのカップ酒が差し込まれているような状態だったので、海外重視しているラーメン屋側としては無視はしづらい状況だな、とも。

thedieline.com

ただ、ラーメン屋側の穴として、このカップ酒自身は海外の話ではあるので、不使用取消審判の争点としては酒造側にも芽がありそうです。不使用取消審判というのは、3年以上使用されていない商標は、他の人が請求して取り消すことができる仕組みです。おそらく、2023年5月に酒造側が区分の判定おかしいだろ!と訴えている部分がそれなんじゃないかなぁと。今のところ審判の状況がどうなってるかはわかりません。
このカップ酒、酒の中身自体は青森のお酒らしく、ラベル製作やパッケージングまでは日本側でやってるでしょうけど、国内では売ってないようです。その場合の不使用の判断はどうなるんですかね。さすがにわからん。

さらに難しいのが、2023年3月にラーメン屋側がほぼ同一のロゴにカタカナを併記した形での『AFURI\アフリ』商標を酒の区分で被せてきてるんですよね。これについては、時系列的にも完全に吉川酒造を狙い撃ちしてきています。これは、商標のルール上は問題ないけど、かなりダーティーだな、と。ここについては後でも触れます。

他にも、AFURIハイボールというメニューを国内で提供してますし、商標登録傾向眺めてるとホップ絡みとかも押さえているので、クラフトビールを作ろうとしているという社長コメントも含めると、酒類に力入れて商標取っているのは、むしろちゃんとしてるなって印象です。

 

ちなみに話は逸れますが、ラーメン屋側は「医療、動物の治療、人又は動物に関する衛生及び美容並びに農業、園芸又は林業に係る役務に関する区分」の44類でも「AFURI」の商標取ってるんですよね。(商願2022-117162)

そういわれてもわからないかもですが、商標の網羅状況を鑑みると、サウナ、あるいは温泉施設を設置し、酒やラーメンも提供する総合娯楽施設にするつもりなんじゃないかな、と。こういうのが透けて見えるの、知財のおもしろいところだと思います。

 

というわけで、この項のまとめとしては、ラーメン屋が事業拡張の一環として酒類の区分でAFURIの商標抑えている事自体は総合的に妥当だけど、それが酒造側の訴えで取り消される可能性は無くはないかな、と。

 

③"雨降"と"AFURI"が商標として類似か

商標の類似性を理解するためには、「称呼」(呼び方)に触れなければなりません。商標の類似性にはいくつかの観点があるんですが、その中でも重要視されるのが称呼なんです。表記の漢字などは違っていても、口に出した時の音が近いというのは商標的には似てるからダメ!と判断されやすいというわけです。

今回の件だと、『雨降』を「アフリ」と読ませるのはもちろんアウトですが「アフル」でもほぼ却下されると思います。「アメフリ」だと音数増えてるのでどちらとも言えないラインでしょうか。
そもそも商標で係争が始まるとその時点で誰も得しないんだから、そういうギリギリ攻めてる奴はその時点で商業的にはヤバいし、そういう意味で酒造側が新ブランド立ち上げ時にちゃんと商標について考えていない時点で、私としては狂気の沙汰に思えるわけです。

これは『雨降』の商標登録データですが、称呼部分はこうなってます。この「参考称呼」(と呼ばれてるけど正式名称知らん)自体は、データ登録時に特許庁側が暫定的に付ける呼び方なので申請側としては何の意味もないんですが、逆説的に言うと漢字ロゴだけの登録だとこれくらいは読みの解釈幅は持たせられるわけです。おそらくラーメン屋の中村社長もこの登録を踏まえた上で

例えば、「雨降」と書いて、「UKOU」と読ませるのはいかがですかと。そうすれば、阿夫利山は、元々は「雨降り山」から転じていると我々と同じルーツである事を伝えられるし、海外のAFURIの店舗でも吉川醸造さんの日本酒を同じ水源の仕込み水を使っている同郷の日本酒として全面的に推せますし。

と提案したんだと思います。(中村社長は司法書士目指してたらしいので、この辺の下調べはちゃんとしてそう、という憶測です。今回の件の裏付け調査中は、そんなどうでもいい情報に詳しくなるばかり……)

一方で、称呼がごまかしようもなく「アフリ」として固まってしまうと、称呼=読み方の被りは相当に不利になります。ただ、『雨降』のロゴだけでいうとパッと見で受ける印象が違うので、非類似と判断される可能性も十分にありますし。


なのに酒造側は、称呼を譲らないばかりか、2023年3月14日に『§雨降∞AFURI』というようにアルファベットを併記した他のロゴまで追加申請してるんですもん。この、所謂"二段併記"のデメリットについて詳しくは各自ググってもらうとして、こうすると称呼上で別解釈の余地が無くなる&他社からは商標回避しやすくなるんで、デメリットが大きくて普通は避けます。

よって、商標知ってる人間にとっては、係争受けてるタイミングでの二段併記ロゴでの追加出願は「正気か!?」となる事例です。ってか、弁理士止めろよ!

これについては、元をたどると2021年出願の『雨降』の時点でAFURIを併記していないのに、製品側のラベルにはAFURIを加えてしまっていて、整合性を取るためにやむなく取ったのかもしれませんが……

この場合、二段併記の後者が通る可能性は低いと思うんですが、漢字のみの前者の無効審判結果に影響ってどのくらい出るんですかね?

 

さて、この視点を持って、ラーメン屋が2023年3月6日にぶつけてきた商標(商願2023-023182)を見てみましょう。そう、アフリという読み方を固定した二段併記ロゴをあえてぶつけているんです。

本当に狙ってやってるの?と思う方もいるかもしれませんが、二段併記しないロゴをビールのみの区分で同日に出願してるんです。(商願2023-023181)

いやー、アフリという称呼を固めるために、だいぶエグい戦略組んでますね……まあ、邪推かもしれませんが。

 

最後にさらなる場外乱闘をお見せしましょう。互いに複数の出願をした2023年3月の6日と14日に、ひらがなの『あふり』を区分33類、つまり酒類のみで被せあいしてるんですねぇ。互いの知財で「ここはひらがなも抑えなきゃ!」という読みが一致してます。両方ともまだ審査中ですが、この結果がどうなるのか、定期的に監視しておこうと思います。
それにしても、せめてこの両者の日付が逆だったらもう少し酒造側にも手札が増えたかもしれません。先願主義なルールの中の1週間の差がなんと大きいことでしょうか。

 

この項をまとめると、『雨降』は「アフリ」という称呼だと酒造側が譲らない場合、ラーメン屋側のAFURI商標がどう効いてくるかってところでしょうか。

 

おまけ①

今回の件でラーメン屋側を「商標ゴロ」と呼んでいるのを多く見かけましたが、そういう安易なレッテル貼りを止める方法、無いんでしょうかね。

一時期のK○NAMIみたいに、ちょっとでも関係しそうな商標は手当たり次第に取ってた、みたいな事例なら社会通念上非難されてもしょうがないと思いますが、自社名そのものになってる商標に対し、戦略的かつ網羅的に商標を取得し、ときには行使するのは圧倒的に正しい行動です。

そういう正当な権利の行使に対し、ここまで書いたような背景があると想像もせずにレッテル貼るようなSNS文化はなんとかならなんかなぁ、と。

おまけ②

文書の大意としては、”AFURI”と記載した当社商標の使用はAFURI社の著名性にフリーライドしその商標権を侵害するものであり、商品を全て廃棄処分すること等を要求するものでした。

これにつき、双方弁護士を交えた協議を重ねて参りましたが、最終的に不調に終わったことから、AFURI社は、当社商標の使用差止や損害賠償等を求めて東京地方裁判所に提訴しました。

こちらは、酒造側が最初に出したアナウンスの一部です。これに対し、「酒を捨てろとは飲食屋が何事だ」という感情的な反応も多く見かけました。

これ自体は酒造側視点による要約なのでその時点でニュアンス変わってそうですが、逆の立場になって考えると、法的に自身の権利侵害していると判断しているものを「今ある分は売っていいよ♪」とはならんでしょ、普通。

その他の部分も全体的に抽象的、かつ自分に不都合な部分はすべて隠している文章になってます。意図的にやってるとすると、その鋭さをもっと手前で発揮してほしかったな、と……

おわりに

諸事情で、4項目目に触れる前に、先におわりの言葉を挟ませていただきます。
なんで自分には関係の無いネットの騒動に顔突っ込むような記事を書いたのかというと、「法的にも立場的にも一定の正当性のあるラーメン屋側が、酒造側による先出しの一方的な被害者ムーブのアナウンスによりお気持ち優先でぶっ叩かれてる現状は、処理水放出で科学的エビデンス無視して騒がれている福島県と似たようなものでは?」と感じたからです。

いや、もちろんB to Cの場合は顧客視点でどう世間に受け取られるのかを考えていかなきゃいけないとは思いますが、一方で企業として厳格に動くべきタイミングというのもあります。
そんな複雑な世の中で、先行した被害者アナウンスを鵜吞みにして上げた拳を下せず、複雑な背景があるという事を受け入れられない方を多く見かけました。即応性が命なSNSが大きなパワーを持った現代の弊害ですね。

だからこそ、こういう風にしっかり掘り下げていく暇人な外野だっていいじゃないか、と。その方が世の中、良い方に動きますって。(私のお気持ち表明)

 

④地名を商標として取得し、その権利を行使する行為

さあ、なんでこれを最後に回したかというと、企業法務やってる私の友人がSNS上でしてくれた解説以上のことを書ける気がしないので、そのまま転載して締めたかったからです。

なお、あくまで身内共有用でざっくり書かれたもののコピペなので、本人曰く

使ってもらうのは全然かまわないのだけど、あんまイケてる内容でもないし、もっと本職のヒトが見た時に耐えられるような内容にはなってないかもだから、なんかツッコまれたりはするかもw

砕いた言い方にしてニュアンス変わってたり、原産地誤認(4条1項16号)とか他の論点は端折って書いてたりするので。それでもよければ(/ω・\)

だそうです。

さて、ある意味ここからが本編です。この観点は素人の俺には書けないもん。

「商標」は商品・役務の名前。名前って何のためにあるかって、「個体の区別をつけるため」。だから、逆説的に「個体の区別がつかない」名前は「そんなの商標じゃない!」って商標法は独占権を与えることを許さない。そうすると、「地名だから即ダメ」ってことじゃなくて、「その名前が使われる商品、サービスにおいて、お客さんが商品の産地・販売地、サービスの提供場所を単に意味してると思うなら、そんな名前はそもそも商標として機能しないから商標権認めない」って理屈になる。たとえば、小岩で販売されるまんじゅうに「小岩まんじゅう」って名前を付けても、他の小岩で販売されるまんじゅうとは区別がつかないってことになるから、まんじゅうに「小岩まんじゅう」って名前を付けることに独占権は与えられないよね、って理屈になる。
そんなわけで、そんな立法趣旨を踏まえて特許庁の審査基準においても、『(1) 商標が、国内外の地理的名称(省略)からなる場合、取引者又は需要者が、その地理的名称の表示する土地において、指定商品が生産され若しくは販売され又は指定役務が提供されているであろうと一般に認識するときは、商品の「産地」若しくは「販売地」又は役務の「提供の場所」に該当すると判断する』、『(2) 商標が、国家名、その他著名な国内外の地理的名称からなる場合は、商品の「産地」若しくは「販売地」又は役務の「提供の場所」に該当すると判断する』と定められている。
そうすると、もっとも最初に立ち返って、ラーメン屋さんが「AFURI」を飲食物の提供(飲食店)ってサービスに商標登録したのは2010年なんだけど、その当時において飲食物の提供というサービスに「AFURI」って名前をつけることが、飲食店のごくごく平均的な利用者(お客さん)に、「単にサービスの提供地を名前にしただけじゃん」って思われることになる?って話。そして、それが認められた後に、2019年当時にお酒って商品に「AFURI」って名前をつけることはどう?って話。
もちろん、特許庁の審査官だってヒトの子だから、気付かずに登録査定しちゃったってことはありうる。それなら、登録過誤による無効を訴えて商標登録を無効にすればいいって話で、それしてる?してるならできる?って話。
言い換えれば、2010年当時・2019年当時に飲食店や酒の名前に「AFURI」って付けたらそれは産地・販売地表示だろってお客さんが思うだろうって認定するに足る客観的事実があったってことをロジックと証拠で示せる?示せるなら、特許庁の審査があかんかったってことになるし、示せないなら特許庁の審査に過誤はなかったってことになる。そして、商標権は登録されている以上、絶対的な「独占権」を発揮するから、その状態で同じ名前で被せて来る方が迂闊やし阿呆やろ、って見方だってできるって話。
仮に結果論的に今時点の認識として、『「アフリ(阿夫利)」って地名だよね』って通念があったとしたって、商標登録された2010年当時や2019年当時はそうじゃなかったかもしれない。その当時に地名だなんてことはさっぱり知られてなかったかもしれん。そうだとしたら、「アフリ」は地名なんだってことを知らしめて今現在の通念を形成せしめたのは、ラーメン屋さんの営業努力の賜物だってことも言えるかもしれない。だったら、ラーメン屋さんのその営業努力だって保護に値するって言えるんじゃないの?って話で。「AFURI」って名前で長年営業して、その看板にお客さんの信頼と期待を蓄積してきたんでしょう?お金使って労力払って汗水垂らして信用(ブランド)を成したんでしょう?なら、そっちの努力だって保護すべきだって。そういう価値判断だってできない?って。それって、「地名なんだからみんなが利用できるようにすべき」ってことと同じように、保護に値することなんじゃないの?じゃあ、両者を天秤に乗せた時、どっちを傾けるんだい?って。どっちに分があるって認めるんだい!?って話で。重要なのは、この国は自由競争主義の社会だから、『「自分」がこの先、どっちの立場にもなり得る』ってことで。じゃあ、自分だったらどっちの立場に立ったときは何をどう主張して、この現実で自分の理想として追い求めることを勝ち取っていくんだい?ってことで。そうやって考えてくと、法律ってたまらなくシビレるだろう? シビレない?オレはシビレる!+(0゚・∀・) +

私的要約

友人には失礼な気もするが、長文のロジックが頭に入ってこないって人もいるかもしれないので、私自身の理解を踏まえた要約も付記しておきます。

 

基本的に地名は商標として認めないという基準の元、『AFURI』が2010年時点で商標と認められているという事は、少なくとも特許庁は『AFURI』と聞いて『大山』なんてマイナーな山の、さらにその通称である『阿夫利山』という地名だと客がすぐに認識する状態にはないレベルの知名度だと判断したわけだ。

もちろんその特許庁の判断が間違っているかもしれないけど、それに対して異議申し立てするシステムはあるわけだし、その判断が間違っていたって証拠を誰も揃えられてない以上、「商標権」という強固な権利はAFURI株式会社のものであり、その権利は保証されるべき。

また、逆に2023年の我々は商標トラブルになるくらいに有名な地名として「AFURIと聞いたら阿夫利山が浮かぶ」状態なのだとしたら、「元は地元民しか知らないような名前を、ブランドとして高めたその貢献は評価すべき」という観点は、「地名なんだからみんなが利用すべき」という観点と同じように保護に値するって考えもありじゃないの?と。

もちろんこれは一つの考え方であり、そういう様々な理想が絡み合った中で、自分の理想を勝ち取るためのツールの「法律」ってシビれない?

シビれる!!!!!!

おもろ!!!!!

引越しにおけるネット回線ガチャと開通待ちで勝利するための知見まとめ 2023春

www.hageatama.org

【追記】続編を書いたつもりが何の参考にもならないので読まなくても支障はありません。

 

先日、引越し先のインターネット契約で困ってたリアル友人にSNS上で細かくアドバイスしたら大変感謝されたので、今後は「まずこれ読んでおいて」と言えるような記事を書き残しておきます。

直近3年で3回引越し、プロバイダ利用4種の経験をまとめた素人記事でして、気になる点があればどんどんとフィードバックして充実させていきたいのでご指摘お願いします。

6/21(更新翌朝):光コンセントがある前提で動くのは厳しくない?と言われて、確かにそう思ったので改訂。LANケーブルについての記述追加。

6/21(夜追記): 不動産屋さんと光コラボについて追記

 

【主張の概要】

  • 光コンセントが元からある物件を選べ
  • フレッツ光回線でプロバイダをいつでも切り替えられるようにしろ
  • IPv6 (IPv4 over IPv6)で接続しろ

の3点です。そんなのわかってるよという方は読まなくていいレベルの内容です。

 

【対象者】

  • 回線ガチャで勝率を上げたい
  • 自宅回線が100Mbps以下では息が出来ない
  • ある程度、回線の選択肢がある地域
  • 引越し当日からインターネットできないと困る
  • 多少割高でも確実性を優先させたい
  • 自宅のネットワーク機器配線とルーターの設定を自分で出来る
  • 集合住宅予定(一軒家の方は勝ち組なので適宜読み飛ばしてください)

 

【回線事業者とプロバイダ】

さっそく、この記事で一番ややこしくて一番大事な部分です。

国のルールとして、物理的なインターネット回線自体を整備・管理する会社(回線事業者:NTTなど)と、ソフトウェアとしてのインターネット接続提供会社(プロバイダ:OCN・BIGLOBEなど)は別になるように決められてます。違いがわかりづらくて、ほとんどの方は区別できていないと思います。

ネット回線選定でまず初めに考えるべきは、大元である回線事業者をどうするかになります。要するに「NTT提供のフレッツ光か、それ以外か」ですね。

当記事の主張は「フレッツ光一択」です。

 

フレッツ光以外の回線事業者としては以下があります。

  • 独立系のNURO光、au光
  • 電気会社系

一時期はNURO光がもてはやされていたのに、今現在は地雷扱いされてるのもこの辺が関係しています。フレッツ光以外の回線事業者はプロバイダも事実上のセットが多く、利用者が少ないケースを引き当てるとバカっ速になりますが、利用者の増加などで回線が遅くなっても解約以外に改善の余地が少ないわけです。

一方、フレッツ光の場合は回線提供とプロバイダが切り離されており、プロバイダ変更の選択肢が多いため、そちら側での速度改善の余地があります。フレッツ光の上でならプロバイダは工事無しでタイムラグ無く簡単に変更できるため、ダメと思ったらさっさと切り替えていこうというのが当記事の骨子です。

 

【物件探しのスタート】

さあ、では引っ越し先を探していきましょう。細かい話をし始めるとキリがないので、物件探しのポイントを1つに絞るとすると「光コンセントが最初からある物件」です。

インターネット回線にもいろいろありますが、集合住宅の場合、1本の回線を複数の家庭で共有してるケースがほとんどです。仮に時間帯によっては速くとも、ネットを使う人が多くなる時間帯では、そりゃ遅くなるに決まってますよね。

その被害を一番軽くできるわかりやすい指標が光コンセントになります。

f:id:hageatama-:20230620214830j:image

これは前の家の内見時の写真になります。下記の光ファイバーケーブル専用の特殊コネクタの差し込み口ですね。電話線のモジュラージャックの方ではなく、「光」と書いてある部分に下から差し込む形式です。この、コンセントカバーの横から"光コンセント"が生えている場合は最初の壁はクリアと言ってもいいでしょう。また、後で写真は出てきますが、光コンセント無しに壁から細い光ファイバーケーブルが生えていて、接続用コネクタがぶら下がっている時も稀にあります。

 

光コンセントがある物件という事は、超高速である光回線が壁際まで直接引き込まれている可能性が高いです。物件の問い合わせ、あるいは内見段階で光コンセントの有無を見極めましょう。

あと、このあとの理解のために、集合住宅で光回線を部屋まで持ってきているやり方が「光配線形式」と呼ばれている事だけ覚えておいてください。それ以外のだとVDSL、LAN配線などがあります。詳しくは、次の項のNTTへのリンク先に説明が載ってます。

 

追記 : 自分の中ではあまりに当たり前すぎて書き忘れてましたが、物件探した経験が乏しい方も当然いますよね。不動産屋さんのインターネット知識は本当にダメダメなので知ってか知らずか適当な事ばかり言ってくるし、当然その人達が登録している物件情報も何の参考にもなりません!

f:id:hageatama-:20230621232457j:image

最大手なSUUMOの"こだわり条件"がこの体たらくですから、物件選択の最優先条件に実測300Mbps以上の光回線を設定している自分とは意思疎通が困難であり、自力で何とかしようというのがこの記事のスタートになります。

 

【フレッツ光の提供エリア検索】

f:id:hageatama-:20230620215037j:image

光コンセントの確認と同時にやるべきなのがNTT公式のフレッツ提供エリア検索サービスです。光コンセントの有無に関係なく、引越し先候補物件や、今住んでるところに回線引き込みたい場合などがあれば、とりあえずこれで調べる、くらいでいいくらいでいいでしょう。

こちらは、部屋単位での対応状況がわかるという凶悪なサービスなので、内見前でも部屋番号が判明次第調べたいところです。

 

光配線方式|集合住宅の導入工事と配線方式について|フレッツ光公式|NTT東日本|インターネット接続ならフレッツ光

公式にもこうあるように、NTT東日本管区だと上記の"ギガマンション・スマートタイプ","マンション・ギガラインタイプ" or フレッツ光クロスのサービス対応と出たなら、光回線が引き込める「光配線」物件だと確定出して良いかと。

 

【116へ電話】

光コンセントの有無や上記検索サイトでのフレッツ光エリア内の確認が取れた後にやるべきは、NTTへの電話確認です。こちらもとにかく便利なので、ネット回線が絡む物件選びや自宅のネット開通時などは、前項の検索とセットで使いたいところです。

固定電話だと116, 携帯電話などからは0120-116-000(東日本)、0120-116-116(西日本)のようです。

 

追記 : 西日本は 0800-2000-116 という説も。この辺、西と東を跨ぐとか、光電話とか、携帯回線とか、よくわからん条件があるので各自でお確かめください

 

インターネットの契約なのに電話が必要なのは納得し難い面のもわかりますが、私の場合は内見先から直接電話するくらいに、116への問い合わせは強力です。

オペレーターの方がきちんと知識を持っているのと、NTT側の持っている回線状況のデータベースがエグいくらいに充実してるので、事情を伝えると契約前でもその部屋の回線の物理的な開通状況と、工事が必要かを教えてくれます。ここをクリアできれば、99%以上の確率で引越し後の即日開通が狙えます。

 

光コンセントが存在する物件でも

  • NURO光などの他の光回線が来ている
  • 退去時の原状復帰で回線が撤去されている
  • 管理会社の関係で光回線が物理的な引き込みができていない

などの例により、工事無しでフレッツ光が部屋まで来ているかどうかが確実ではありません。一方で、光コンセントが無くても同じフロアまでは導入されてるから1時間の宅内工事で済むかもしれません。NTTが強いのは、過去の工事履歴も持ってる上、他の回線事業者の引き込みでもNTTが宅外工事に入ることも多いので、光回線は工事しても無理な物件なんかも調べられたりします。どんな場合でも、とりあえず116へ直接聞いてみるのがベストです。

なお、初回通話時は回線の工事状態のみの確認に留めて次に進んでください。

 

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ちなみに今住んでいる物件は、J:COM提供のauひかりとフレッツ光の2系統が引き込まれていて内見時に「何だこれ!?」となりましたが、116で状況を伝えたら、少なくともフレッツ光はすぐ使えると確認できて大変助かりました。

 

【IPv6】

さて、次はプロバイダ選びですが、その前にIPv6の話をします。当記事で2番目に重要な項目です。

通常のインターネット接続はIPv4(PPPoEとも呼ばれる)という規格での接続になります。しかし、この旧規格が遅すぎるため、次世代規格であるIPv6(IPoE)経由で接続するべきなのが令和の新常識です。

ここで問題になるのが、プロバイダ側のIPv6接続は無料だけどオプションの場合があり、知らずに契約すると速度10分の1以下を強いられたりするという罠が仕込まれている点です。

そんなわけで、"IPv6"あるいは"IPv4 over IPv6"(IPv6経由でIPv4に繋ぐ奴)対応と書かれたプロバイダとオプションを選んで契約しましょう。

 

【みんそく】

次はプロバイダ選びに移りましょう。

プロバイダは提供状況の地域差がバチクソ大きいので、ネットや友人のオススメを聞いても何の役にも立ちません。そこで活躍するのが、集合知による各地域の実測データベースである「みんそく」です。

minsoku.net

引っ越し予定地域の市区町村における、光回線の中の"IPv6接続 IPoE"である測定例、あるいは"IPoE方式のフレッツ光回線の通信速度レポート"を探しましょう。回線とプロバイダの組み合わせで良さそうなをいくつかメモっておきましょう。

 

ついでに我が家で今測った例を貼っておきますね。21時でこれならまあまあでしょう。

 

【IPv6の接続方式】

今回の記事に入れるか微妙なラインの小難しい話ですが、たまに事故るので入れておきます。IPv6の接続方式がプロバイダごとに異なるため、プロバイダ選びにも影響するからです。

IPv6への接続方式は大別してMAP-E系とDS-Lite系があって、そこからさらに細分化されています。ユーザー側としては、どれであろうがプロバイダ側から提示された接続先、ID、パスワードを入れるだけなので違いを感じる機会はあまりありませんが、発売から数年経ってるルーターだと、一部接続方式に対応していない場合などがあるので注意が必要です。

プロバイダを決めたときは、公式サイトのIPv6情報が載ったページを確認し、以下のどれかを確認すると良いでしょう。(以下に載ってないものも存在します)

併せて、持ってるルーターの型番をググって対応状況と照らし合わせれば完璧です。

  • v6プラス(MAP-E系) : 最もメジャー。とりあえずこれ選んでおけば安牌。BIGLOBEの"IPv6オプション"も互換規格、なはず
  • transix(DS-Lite系) : 2番手の規格。MAP-E系とはベースが違うのでこだわる人はメリット・デメリットを比較したい
  • OCNバーチャルコネクト(MAP-E系) : 後発ながらNTT系列なせいか採用が進んでいる。ただ、混雑時の帯域を絞る頻度が高いという信憑性は怪しい噂も。私はそれを確認したくてこれを選びました😅
  • v6コネクト(DS-Lite系) : マイナー規格。機器対応も不十分なので注意。ほぼASAHIネット限定だけど、ASAHIネット自体は良いと思います

 

【光コラボ】

さあ、あとはプロバイダ含めた回線契約になるわけですが、フレッツ光で契約してプロバイダを選ぶ場合とは別に、プロバイダ提供している会社がフレッツ光の回線を借り受けてプロバイダとまとめたパッケージとして提供してるケースがあります。これを「光コラボレーション」と呼びます。

 

つい数年前まで、光コラボは何かあった時にプロバイダ変更しようとしても回線が紐つけられてる契約で変更が困難という地雷プランでした。しかしこれはフレッツ光の事務手続きの問題でしかないので、光コラボ間も乗り換えが簡単になるようなルール改訂が進み、ユーザー視点ではさほど気にしなくてよくなりました。

 

メリットとしては、まとめて契約になってキャンペーンや割引が受けやすい。デメリットとしては、長期契約の縛りがあるプランを選んでしまうと解約が困難な点と、光コラボの変更は若干手続きが煩雑な点でしょうか。NTT管理側のフレッツ光に戻るのが難しいというのも理解しておくべきです。

特に物理的な工事が発生する場合は、フレッツ光と直接だと工事費は有料になるので、その際は光コラボの工事費無料キャンペーンを狙いたいところです。

光コラボを申し込む場合は、光コラボを提供している事業者のWEBページから申し込んでください。

 

追記 : これでも「光コラボも選択肢に入れていいとは思うよ?」くらいの前向きな紹介のつもりでしたが、確かに言われてみると自分は絶対に選ばないので細かな知識がありませんでしたね。プロバイダを選べるらしいドコモ光を中心に、スマホと紐つけて安くする方向は検討の余地があるかもしれません。

ただ、全体設計の都合上、ネットの光コラボ紹介記事は高確率でプロバイダ、あるいは代理店からのアフィリエイトの影響が拭えないので、そういう面もあってこういう記事書こうと思ったわけなんですよね。そう言う意味だと、いい写真がなくてAmazonの光ファイバーケーブルを貼っててすまぬ。(流石に誰も買わないでしょ)

 

【フレッツ光(NTT)経由の契約】

NTT経由で契約する場合、公式サイトから申し込んでもいいのですが、個人的には前述の116から電話で申し込む方をオススメします。というのも、引っ越しが絡むと接続機器やプロバイダ書類などの受け取りが引っ越す前がいいのか、引っ越し先の方がいいのかなどの調整が入るので、電話口でのオペレーターさんによるフレキシブルな対応を嚙ました方が楽だからです。

電話をする前に、プロバイダ選びは済ませておき、契約時には「開通作業は自分でやるので工事及び作業員さんの派遣は不要」、「IPv6でつなぐ」旨をしっかりと伝えるだけです。

NTT経由でプロバイダを申し込む場合は、NTT側で住所変更や支払い方法が確定してしまえば、その情報を元にプロバイダの手配をしてくれて、かつ支払いもNTTに集約されるので、116だけで完結する……はずです。(いつも更新ばかりで新規契約したことがないので確定できず)

デメリットとしてはネット経由だと何かしらのキャンペーン等を受けられるかもしれない点ですが、NTT経由だと大したのはない上、プロバイダの額も1ヶ月1000円程度なのでそんなに安くはならないかと。

 

念のため書いておきますが、例えば今の私が入っている@niftyだと"@nifty光ライフ with フレッツ"と"@nifty光"があって(わかりづらすぎる!)、前者はNTT経由のプロバイダ契約、後者はプロバイダ側が光回線を借り受けている光コラボになります。うまく使えば安くなるのは後者ですが、前述したように3年プランなどで契約が縛られると、当記事のメインの主張である「フレッツ光にして、速度が遅いようだったらさっさとプロバイダ側を乗り換えよう」という動きが取れなくなるのでご注意を。

 

【引っ越し前後】

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さあ、あとは引っ越し先での開通を待つばかりです。自宅内の配線経路としては"光コンセント→ONU(NTTから借りる接続機器。上の写真参照)→ルーター"という経路になり、貴方の作業は以下の2つになります。

  1. 光コンセントとONUを光ファイバーケーブルでつなぐ(先端を傷つけないよう注意!)
  2. ルーターの設定画面でプロバイダへのIPv6経由の接続設定

ここはそれぞれで環境が違うので各自ググっていただくことになりますが、慣れたら15分で終わる範囲です。ここで作業員の方を呼ぼうとすると、シーズンによっては馬鹿みたいに待たされる羽目になるので、可能な限り自力で頑張りたいところです。

 

ちなみに豆知識ですが、基本的にNTTとプロバイダはそれぞれが連携取らずに開通設定を進めるため、「6/21午前に開通作業をしてください」と指示が来たとすると、その前日には開通できるケースが多いようです。引っ越し先でインターネット無しに半日待ったりしなくてもよかったりするよという話でした。

 

【おわりに】

いやー、だいぶ端折って最小限に抑えたはずなのに、フレッツ光が魔窟すぎて長文エントリになってしまいました。電気やガス、水道と同じレベルのインフラになりつつあるのに、要求知識が多すぎるのが悪いんや!

はっきり言って、配線方式とか、「IPv6なので速くなる」、「IPv4 = PPPoE」のようにだいぶ適当な嘘を書きましたが、当初は「ipv6 prefix的にひかり電話ありを契約しよう」とか、「DS-Liteは非対応のルーター多いけど手動でAFTR取ればなんとかなる」みたいな話が含まれていて、8000字超えたあたりで「本来の目的を見失ってる!」と大幅に平易に書き換えたせいなんです……

では、ここからはその名残の余談集です。

 

【家庭内の機器更新】

IPv6は比較的新しい規格な上、IPv6への接続方式がプロバイダ毎に分かれている話は書きましたが、その接続方式に対応しているルーターじゃないとそもそも接続できません。そこで1つの目安として、Wi-Fi6対応のWi-Fiルータに更新しましょうという提案です。

Wi-Fi6自体がここ3年ほどの規格なので対応しているルーターなら最近の機種となりますし、せっかく速い回線を引けたならそれを活かすためにも新しいWi-Fiの規格を導入すべきです。予算が許すなら、2年以内に発売されたBUFFALO製の1万円超帯を準備したいところでしょう。

 

【LANケーブルの交換】

LANケーブルには対応した通信速度などでカテゴリーに分かれており、1本残ってた古いLANケーブルが速度出ない原因だった、のような事例は定期的に聞きます。

LANケーブルのカテゴリーはケーブルの側面にCAT○と印刷されているのでよく見ればすぐにわかります。以下は各カテゴリーの勝手なイメージです。

 

CAT5→(100Mbpsの壁)→5e→6→(10Gbpsの壁)→6a→(業務用の壁)→7→7a→8

 

一般家庭なら5e以上ならOK。6a使っていれば安心って目安です。逆にそれ以上は過剰すぎて不要なんですが、昨今だとフレッツ光クロスなどで10Gbpsが自宅まで届く時代になったので、今後は我が家も7以上に置き換えていこうかなと思ってます。

 

【光回線本質記事】

ガチ勢向けの本質記事も置いておきますね。

sorahの方はなんか読めなくなってるのでWaybackMachineとかで読んで。

https://diary.sorah.jp/2020/06/20/ngn-explained-2020

 

notoken.hatenadiary.com

 

【他の回線事業者】

auひかりについては、対応プロバイダが数種選べる点と、接続先をフレッツ光網と後述の電力会社系を混ぜて使ってたりするので可能性は感じるのですが、周囲に使ってる人の話を聞かないのと、スマホがauじゃないとお得じゃないプランになりそうな印象で、情報がありません。証言お待ちしています。

地方電力会社系は提供エリア内(基本的に西日本)であれば快適回線な可能性が高いうえ、仕組み上IPv6などのややこしい事を考えなくても困らない場合が多いようです。ケーブルテレビ(CATV)系も似たような傾向ですね。

まあ、ダメだった時の逃げ場がないのは変わらないので、その辺をどう考えるかです。

 

【J:COM】

www.jcom.co.jp

途中でもちょっと書いたように、今住んでる物件はJ:COMの無料インターネットも選べて、提供元はauひかりだったんですが、無視してフレッツ光にしました。結果としては大正解。
いや、まあいろんな不幸な事故が重なったせいではあるんですが、引っ越して2ヶ月半で3回訪問があったのにいまだにJ:COM自体の開通すらできてないんです……

 

【速度計測サイト】

fast.com

www.speed-visualizer.jp

普通に測る場合はNetflix提供のfast.comが便利ですが、speed-visualizer.jpだとフレッツ網内の測定が可能です。はい、普通の人は何がうれしいのかさっぱりわかりませんね。

Amazonで買える廉価帯シューキーパーを3つ買ってみた

我が家のシューキーパーは、バネの強い奴とか、スコッチグレインに付いてきたプラの奴とかを常用していて、あまり革靴には良くないなぁと思いつつも、廉価帯ですら結構お高いよな?と放置していた問題と向き合うことにしました。

 

先に結論から述べると、そんなに木型の形状や可動精度には差がある感じはなかったので、3000円未満だとどれ買ってもそんなに変わらないんじゃないかな、とは思います。付属品で何が付いているか、とかで選ぶくらいでもいいのかも。

1位

これで今後は統一しようかな、と。

ロゴ掘られているだけでも少し安心感が上がりますし、梱包が他よりも丁寧だったし、心なしか可動の域の精度もいい気がします。

個人的に気に入ったのは、他の2つよりも足の甲が高めに造られている点。少し伸ばし気味に維持出来る気がします。

付属品はブラシとムートンクロスにサンドペーパー。ブラシは安物感すごいですが、ムートンクロスは肌触り良いですね。

 

2位

唯一、箱と説明書に日本語あり。隠しようのない中華フォントだったけど、日本語自体はそこまで酷くないです。

シューキーパーとしての品質は他と同等かな。
靴べらが入ってるのはちょっとポイントが高い。

 

3位

まず、箱が無地で油染みなのかなんなのか、何か汚れの跡が付いてた上、中も一番粉っぽかった印象。

2位と3位は形状的に区別できる感じはありませんでした。若干、こっちの方が稼働部の動きが渋かったですが、この価格帯だと個体差レベルでしょうね。

 

新型コロナに罹った知見共有 2023年01月ver.

n = 1なので精度は不明ですが、どこかの誰かに向けた知見を書き残しておきます。

ステータス

  • 2023年1月に罹患
  • 一人暮らしの30代男性
  • 横浜市在住
  • ワクチン4回接種(2022年12月にオミクロン対応のを接種)
  • 引っ越したばかりでかかりつけ医無し
  • 発熱は38℃強がピークで、5日間ほど発熱が続いた

 

あやしいな?と思ったら

www.pref.kanagawa.jp

まずは県の感染症対策ポータルサイトを探しましょう。自分の在住の神奈川県については、抗原定性検査キットで初動が決まる模様。しかし、検査キット使うか考える時点で外出しづらい状況な訳で、すでに戦いは始まっています。

自分の場合は、帰宅したら普段だったら気にもとめないレベルの喉の違和感を感じて、念のため検査キットの手配等やりましたが、あれは我ながら偉かったなと自画自賛。

 

"医療用"の抗原定性検査キット入手:ヨドバシを信じろ

国が認証した"第1類医薬品"の検査キットを使わないと意味が無いのですが、Amazonを初めとするインターネット・薬局には、"研究用"が溢れかえっています。

  • そもそものセルフという面を含めて検査精度の怪しい抗原検査なので、精度が担保されたキットを使った方が望ましい。
  • 仮に"研究用"でいくら陽性になっても、行政側では取り合ってもらえない。オンラインでも、電話口でも、「研究用じゃないよね?」という確認が繰り返されていた。
  • 逆に、正規の検査キットで陽性になったら、行政的にはそれだけで確定になる。

医師免許持ってない人がいくら正確な診断をしても、診断精度も、法的な取り扱いも、「それ、あなたの感想ですよね?」としかならないのと一緒。

 

んで、Amazonには何百と並んでいる検査キットの99%が"研究用"という名のジョークグッズなのですが、ヨドバシの通販はきちんと"医薬品"が上位に来ており、かつ在庫もしっかりと取りそろえてくれています。ヨドバシを信じましょう。

https://www.yodobashi.com/category/159888/165527/165593/500000215000/

"研究用"は、薬機法の関係なのか、"研究用"とパッケージ等に明示はしっかりされているはずなので、素人でも区別は簡単です。もっと詳しく知りたい人は、厚労省がホワイトリスト形式で"医薬品"扱いの対象製品を後悔してくれているので、それと照らし合わせましょう。

この時、そもそもの測定方法自体の精度も怪しく、抗原検査キットだと発熱直後ではウィルスの増殖が足りずに陰性になる場合も多いらしいし、終わりの判定も自分でした方がいいので、お金が許すなら複数個買っておいていいと思います。

 

一方、そもそも自覚症状もあやしいのに1500円も払えないよという方向けには、"研究用"の中で以下をオススメしておきます。3日目くらいの一番キツい時でしたが、遊びで測ったらちゃんと陽性は出ました。

 

www.amazon.co.jp

 

念のため、"研究用"抗原検査キットヤバい、という一例を。
東亜産業というのは、悪名高きクレベリンとかいう雑貨販売で名を馳せたアレな企業ですが、そんな企業の取り扱う検査キットに精度を求める方がアホでしょう。しかし、近所のドラッグストアにもこの商品が並んでいたし、Amazonでも売れまくってる事実だけでも、問題の根深さはわかると思います。「全国の自治体で採用!」の売り文句のため、無料でばら撒くのはクレベリンでもやってましたよね。

検査キット自体、本来は「2~30℃の環境で保管して下さい」になってますが、"研究用"を売っちゃうような企業がそんなところにコストかけて管理するとも思えませんしね。東亜産業が卸の1つでしかない商品なのかはわかりませんが、やたら見掛けるこのパッケージだけでも避けましょう。

prtimes.jp

 

陽性者管理番号発行

国としては、"陽性者管理番号"が発行されることで晴れてCovid-19の感染者と認められます!

んで、これは県の準備する登録フォームからオンラインで自主登録ができました。"第1類医薬品"のキットでの判定なら、名前と日付書いたキットと外箱並べた写真1枚でOKです。

 

しかし、今となっては個人単位の動きとしてはそれで正解だったのか?という印象も拭えません。
というのも、後述しますが、陽性が確定した瞬間に家から一歩も出られなくなるので、よほどのかかりつけじゃないと診療所等で処方箋出してもらったりができなくなります。結果、1人で市販薬飲んで寝るだけの療養となりました。普通の風邪より、だいぶスパルタンな療養を強いられます。

陽性の確定自体は発熱外来で行って、その場で診療をどうするかをお医者さんに相談しておくべきだった気が……

発熱外来自体は、自覚症状ないとかだと医療体制に負荷かけるだけだし、利用者視点でもウィルスの巣窟に突入しにいくようなものなので、キットで確認してからにはしたほうがいいと思います。

 

療養物資の入手

いよいよになったら周辺に住んでる知人に頼んだりも出来たし、何なら偶然、母親が都内へ遊びに来てたんですが、状況も状況なので、頼るのは最終手段ですよね。
そんなわけで、ネット経由の置き配に頼れるというのは心強かったです。

  • アセトアミノフェンやイブプロフェンなどのドラッグストアで買えるレベルの解熱鎮痛薬はAmazonでも買えます。我が家はワクチン副作用向けに買い込んでたけど
  • ネットスーパーは当初「文明、最高!」と思ってましたが、最低配送額3000円とか設定されているところが多く、寝込んでいるときに商品選ぶだけでキツかったです
  • コンビニのデリバリー即応には助けられました。出前館のローソン配送品リストに鼻セレブを見つけたときには狂喜しましたよ。神はそこにおられた!

 

処方薬をもらう(もらえない)

県の基本スタンスは「かかりつけ医に相談しましょう」なんですが、私の場合は引っ越してきたばかりでそんなものはありませんでした。んで、次点の想定モデルは

「オンライン診療」を受けましょう。できれば受診の必要があるからお住まいの近くを選んでね

なんですが、現実的には以下の通りでした。

  1. 近所の一般的な診療所:そんなものに対応してるわけがない
  2. 一部、やる気のあるオンライン診療対応診療所:予約ページに行くと一見さんお断り
  3. 例外的になんでも受け入れるオンライン診療対応診療所:予約殺到
  4. 県のオンライン診療対応診療センター:週に1~2日しかやってない

オンライン診療に非対応の近所の診療所に電話かけても「うちではどうすることもできませんね」と邪険にされ、その旨を県の療養支援センターに電話すると「ポータルサイトの情報見て下さい」→「いや、あの、それ見てダメなんで電話してるんですけど」→「じゃあ、うちではどうすることもできませんね」という、労力の無駄遣いループ。

 

39℃超えて本当にヤバい時は、気合いでオンライン診療の予約を確保し、近所の調剤薬局へ処方箋回してもらってそこから直接自宅へ届けてもらうよう頼む、とかになりそうですが、そこまでする気力は無いでしょ、普通……

 

ということで、従来の発熱だったら使えた「近所の診療所でカロナールもらう」事すら困難なので、その前提を持って行動した方がいいかなと思います。

 

その他あれこれ①:自分で何とかする

春から第5類云々言ってますが、現状でも行政が何かしてくれた感は皆無ですね……
電話窓口がすぐに繋がったり、LINEのbotが1日ごとの見守りをしてはくれていましたが、お医者さん含めて、「重症化した時には何とかしてくれるかもしれないが、それまでは1人で寝込んで何とかするしかない」という環境でした。

自分の場合は症状軽くて何とかなりましたが、インフルエンザ並の、目を開けるだけでもつらいレベルの高熱に襲われていたら、いろいろググる気力もなかったでしょうから、中途半端に「支援を期待して空振り」を繰り返すのはキツかったと思います。

 

その他あれこれ②:コロナはただの風邪?

ただの風邪かと言われたら、自分の場合はただの風邪でしたが、過去のどの風邪よりも発熱も症状も長く引きずった感じで、この辺が猛威を振るってる一因なんかなぁと。高熱が続くだけでも体力奪われますし。

そして、ただのインフルエンザなスペイン風邪で数千万人が死んだわけですし、他の病気よりも、マスクに手洗い、うがいでシンプルに対策しやすいわけで、これからも基本を忘れずに付き合っていくしかありませんね。

 

その他あれこれ③:ワクチンは極力打っておこう

実際にどこまで症状抑制に効いてたのかはわかりませんが、熱出して寝込んでいる間に「とりあえず4回目まで打ったし、あとはなるようにしかならんやろ」という心理的安全を買えただけでも、結構な効果があったと思います。先月、帰省のために打ってなかったら「あー、4回目もうっときゃ良かった」と後悔したタイミングがあったと思うので。

症状自体も、当たり前なのかなんなのか、咳・喉の痛み・鼻水以外はワクチンの副作用と変わらん印象だったので、免疫反応的にもワクチンは打ち得だな、と。

 

その他あれこれ④:自宅療養の終わり

陽性者登録時点を最後に、行政側からも予定日すら何も言ってこないので、未だにキツネにつままれたような思いです。

LINEのbotが朝の生存確認してこないから「終わった……のか?」というレベル。
入院とかホテル療養だと「今日で終わり!」とはっきりわかりますが、自宅療養の場合は判断を完全に丸投げされているので、せめてLINEのbotが「本日から療養解除です。お疲れさまでした! まだ感染リスクは残存しているので、自主的な感染予防行動はお願いしますね」くらいのメッセージ投げてくれるくらいしていいのでは……。

 

千葉県の療養解除日カレンダーが優秀だったので、こちらを貼っておきますね。この辺、国が何度か緩和していてルールが錯綜しているので、きちんと管理されているところで確認した方がいいです。

hot-link.jp

 

その他あれこれ⑤:症状記録

結局、2日目に38.3℃くらいまで上がって、そっからだらだらと37℃台を5日目まで引きずった感じですね。幸いというか、食欲はむしろ普段よりあるくらいだったし、寒気や関節痛のようなものもなく、「起き上がるのがつらい」レベルで、毎日12時間以上寝てました。さらに、熱が下がっても下がりきったとは思えない倦怠感や喉の痛みも残ったりしたので、この辺の終わりの判断をお医者さんにしてほしかったというのが正直なところです。

嗅覚や味覚にも異常は無く、謎の体力低下等も感じていないので、その辺は不幸中の幸いでした。

おわりに

ワクチン接種の副作用を「うおっ、だんだん腕が重くなってきた!」とワクワクしたり、検査キットを複数でクロスチェックしたりと、研究者特有のメンタルで向き合っているので、罹ってみた1週間が楽しかった面はいなめませんね。

それもこれも、この3年間で亡くなられた方、医療従事者、研究者などの膨大なリソースと犠牲の上での今だと思うので、2度、3度と罹らないよう、日々の対策を心掛けていきたいなと思いを新たにしました。

さーて、この騒動はあと何年続くんですかね?

自分から見たTHE FIRST SLAM DUNK

 

はじめに

普通の感想は言い出したらキリがないので、自分しか書かなそうな点だけに絞って書き残しておきます。

あと、念のため未視聴の原作ファンに言っときますが、こんな記事読んでないでさっさと劇場に行きましょう。他人に評価を委ねていい映画ではないです。

 

湘南在住

おそらく宮城家の引越し先が辻堂団地という話。

 

完全に私事ですが、去年まで神奈川県藤沢市の辻堂に住んでたんですよね。あのまま住んでたら、辻堂駅前の109シネマズ湘南のIMAXで観てたろうになぁと悔やんでます。

辻堂の知名度がよくわかりませんが、位置としては、江ノ島と茅ヶ崎の中間地点。神奈川県民にはどこまでを湘南と呼ぶか論争があるようですが、湘南の中核地域の一つとして異論ある人は居ない立地でしょう。

辻堂って独特な雰囲気なんですよね。七里ヶ浜や由比ヶ浜、鵜沼なんかの江ノ島以東と比べると、地元民色が強い印象です。
明け方5時にコンビニ行ってると、人生をサーフィンに賭けてる様子の50がらみのおっちゃんが、仕事前の一泳ぎに行ってる光景を見掛けます。サーフボードのラックが付いた自転車や、軒先に干してあるウェットスーツなんて、辻堂来るまで知らなかった文化圏ですもん。

 

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そんな辻堂ですが、おそらく宮城家が引っ越した先のモデルが辻堂団地と思われます。そして、リョータママが黄昏たりしてたあの海岸は、その目の前の辻堂海岸でしょう。富士山の見える西向きの画角で江ノ島は入り込んでなかったし、建物側にあったあの竹かなんかの柵含めて、記憶にある辻堂海岸ですから。
このまま134号線を東に行くと例の鎌倉高校前踏切(アニメOPの聖地)なので、通学の距離感としてもリアリティあるし、自分の早朝ドライブルートでもありました。

 

ここ10年くらいで駅前の再開発が進んでいて住みやすい街などと人気が上がっている辻堂ですが、作中の時代背景が当時のままなら駅の北側は関東特殊製鋼が残っている頃で、今以上に周辺地域よりも家賃も安かったと思われます。

リョータママがシングルマザーとして仕事を求めて首都圏に出つつも、馴染みのある潮騒を求めて選んだ地が辻堂。解釈の解像度上がってきて、映画観ながら1人でニヤニヤしてました。

 

いやー、自分も散歩ついでに辻堂海岸で海眺めながらボーッとしたもんですよ。うわ、死んだ目でサンドイッチをパクついてたら、トンビに掻っ攫われたの思い出したぞ!

 

完全に余談。駅近くの銭湯で地元のじーさんに辻堂の昔話を無理やり聞かされたりしてたんですが、ここ1年で潰れてるやんけ!

Googleマップ開いたら「閉業」表記でてて驚きました。オーナーの人はおそらく30〜40代な感じだったのですぐ潰れるとは思ってませんでしたが、やっぱコロナ禍は厳しかったんですかね……

 

無音の世界

話は変わりまして、試合の最後について。

大学の講義で漫画学(”漫画”が”マンガ”に変容していったところから始まる)を取ったことがあって、その印象的な話の一つが「オノマトペ(擬音)」についてです。

「杜王町の風の音」やら「アメコミ」みたいな例が挙げられる中、究極の表現として示されたのが山王工業戦のラストだったんですね。

要約すると、「人間というのは極限まで集中すると音が消え去る」というのを「オノマトペを排除する」という表現に落とし込んでる、とのこと。(花道がボールに飛び込んだ瞬間からは、山王ベンチの「ドックン…」という心音と、ネットの「パスッ」という手書き描写以外省かれてるから是非読み返してみてほしい)

 

あれから幾星霜。原作者自身による解釈が映像に落とし込まれたのですが、実際にそれは完全な静寂として描写されたわけですよ。テレビに流すことまで考えたら放送事故なので、表現の軸であるという信念がないと効果音だけは入れるとかで日和かねないとこでしょ、あれ。

さらに映画館だと、静寂の中でも観客が息を呑んでる緊張の共有がプラスされ、我々の耳に聞こえるはずのない「左手はそえるだけ」がはっきりと聞こえた瞬間、映画監督としての井上先生に完敗しました😭

 

おわりに

単純に木村昴さんの花道は軽さが足りずに声質が合ってなかったと思うし、CG作画は動きに対して迫力が足りないし(原作の終盤は絵の力がマンガのソレじゃないんだわ)、過去エピソードの挟み方はテンポ悪かったと思ってるし、思いきって前半端折ったのでいきなり美紀男が現れて笑っちゃったし、と気になる点を挙げてたら切りがありませんが、そんな減点法で観る作品ではないですね。

脚本・監督が映像素人の原作者という高確率で事故る建て付けにも関わらず、クリエイターとして描きたい芯以外を削ぎ落とした、見事な映像作品に仕上がってたと思います。

OPで山王工業が現れた瞬間に、薄々わかっていた(花道が坊主でバッシュも赤いんだもん)とは言え鳥肌がブワッと立ち、試合の端々で泣かされ、2時間半が一瞬でした。ポップコーン食べ忘れてたのに退場時にようやく気付いた映画は初めてです。
今年はRRRの年だったなと思ってたのに、最後の月に競る作品が出てきてしまったなと思えてます。

 

シンプルな映画が故に、音響設備のいい映画館でやってるうちに記憶に刻み込んでおきたいですね。