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鉄鋼材料の組織周りとか簡易まとめ

@pullusが鉄-炭素状態図についてまとめているのを見て書く気になったこの企画。真面目に書くか、かみ砕いて書くか悩むところです。以前、依頼の解説記事で"大学の1~2年生が読んでもわかる文章を"という1行を見落として、かなり凄まじい事書いた悪夢が蘇りますが気にしないことにしましょう。いつもの文章レベルは逸脱して書いてみます。

鉄-炭素状態図に関しての基本的な部分は今更過ぎるので@pullusの記事を眺めながら復習することに留めつつ,もう少しいろいろ書き足してみます.かなり概念的に書いているので正確性に欠けますが、イメージの方が大事だと思ってますので、正確な表記は論文等に預けます。

さて、まず炭素量1mass%以上には興味無いので省きます。(ヲイ 補足しておくと,オーステナイトへの炭素の最大固溶量である2.14mass%以上は鋼ではないし、それ以上は状態図自身のお勉強の域だとしか思っていません。(世界の鋳鉄屋さん,ごめんなさい)

各相について

α(フェライト)相
bcc。実用レベルでは純鉄と思って大体あってる。強加工しない限りはへにゃへにゃ。一般的な鋼は、この柔らかい母相に他の硬い相を分散させた一種の複合材となって、鋼特有の強度と延性・靱性を確保している。あと、純鉄は10ppm単位ぐらいまで不純物を取り除けば、錆びなくなったり、低降伏な材料になるけど、実用的ではないので割とどうでもいいな(ぉ
γ(オーステナイト)相
fcc。どっちかっていうとFe-Cよりはステンレスなイメージ。γフォーマーのNi大量投入でfcc化おいしいです。
δ(デルタフェライト)相
bcc。稀に必要になってくるが、基本的に無視。強磁性体なせいで、電子のスピンが影響してきてGの大小からbccfccbccとの3つの同素変態するってのが鉄の鉄たる所以ですよね。
θ(Fe3C/セメンタイト)相
単相で見ることはまず無いので、相と書くと違和感ありますね。硬い。認識としてはセラミックスだと思ってますが、正確な定義は知りません。

ここに大体の相を書き出しました。さて、ここで重要かつ当たり前過ぎなのに意識されていない事実として、ここまでは相(phase)であり、これ以降は組織(texture/structure)でしか無いということです。たとえば、αが単相組織を取るのでパーライトなども同等の扱いをしてしまいますが、あくまでパーライトは組織ではあっても相では無いという事をきちんと分けて考えておかないと破綻します。

各種組織について

(ラス)マルテンサイト
一般認識レベルはめっさ硬い組織ってだけで十分ですが、後輩と話し合いながら改めて考え直すと一番奥が深かったです。まず、bcc(bct)構造のα'とhcp構造のεがあり、後者は高Mn鋼やγ系ステンレス鋼でちょこちょこ出る程度なので割愛。前者は、まずfccの単位胞2つにまたがって見いだせる70度ほど傾いた斜方晶を剪断変形させることでbccを取ります。またこのとき、元のγ相に含まれる炭素量が0.25mass%を超えていると、結晶構造はbctを取り、C軸方向に伸張して八面体空隙へのCの進入に異方性が発生します。また、強化機構だけに注目すると、
  • 炭素の分配を伴わない無拡散変態により、本来のα相ではありえないレベルの炭素の過飽和固溶体となる。
  • 形状を出来るだけ変えずに相変態する課程で転位や変形双晶などの格子欠陥を高密度に含む。(転位強化)
  • 冷却事にMs点を越える前までに炭素の再配列・炭化物の析出が発生(粒子分散強化)
  • 変態による双晶などで一種の微細組織を形成(結晶粒微細化強化)
と各種強化機構の加算則により非常に強度の高い組織となります。水冷するだけでこんな組織が出るってのが素晴らしいですね。
パーライト
γ→α+θ。生成条件も含め、教育的効果が非常に高い組織(ぉ 初めて組織写真を見たときは、自然のルールの精緻さに感動すら覚えますね。
ベイナイト
TTTのノーズ以下、Ms点以上で保持すると、炭素だけが拡散することにより出てくる組織。強度-靱性バランスはいいんですが、わりと敏感かつ中途半端な温度域での恒温変態というのは工業的にはめんどくさいのでマイナーです。下部ベイナイトの方がおいしいですが、極低炭素鋼では上部ベイナイトしか生成せず、炭化物の分散の仕方などで種類を定義出来ないので、本当の意味でベイナイトを理解している人間は日本でも100人もいない予感。余談ですが、最近副業的にこれの研究してます。踏み込んで研究されてないのってベイナイトぐらいなんですよね。
トルースタイト
マルテンサイトを中途半端な温度で焼き戻すとα+微細θの混合組織が生成します。
ソルバイト
トルースタイトをさらに高温で焼き戻すとθが凝集→粗大化し始めます。とっても焼き戻しっぽいですね。機械部品とかの調質はこの辺。

ベイナイト以降は趣味で入れてみましたが、いよいよじゃない限り知らなくても何の支障もない世界です。とくにトルースタイトとソルバイトはγ域から共析温度以下へ焼き入れた時を表す場合もあり、学術的には無かったことになってます。

鉄と炭素

結局、鉄-炭素系で何が問題になるかというと、単純に固溶量と拡散ですね。特に、同じα+θ組織でも多種多様な形態を取るのは、550℃以下ではほとんど動かない鉄原子と、150℃程度でも勝手に動く炭素の拡散具合により、吐き出しと相変態がさまざまな条件に分かれるからなわけです。当たり前の事実ではあるものの、これをしっかり理解すると固相変態が楽しくなります。

極低炭素鋼

加工性確保などのためにIF鋼やら極低炭素鋼が増えてきてますが、ここでも組織という観点では分類出来ます。つまり、系統的にはαながら、その中でも細分化して分類出来るわけですね。

うむ、ここでは名前を挙げておくだけにとどめておきますが、マニアックな世界で素敵ですね! Metallurgistはこういう物を見てニヤニヤするわけです。

参考文献というか、知識元は元京大の牧先生、東北大の古原先生、九大の高木先生です。組織制御とかの先生方って、こういう基本的な部分を話すときこそ鉄への愛が籠もっているので、負けてられないなぁと思います。