読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

#きんどう本 を読んで思ったこといろいろ

電子書籍界隈では知らぬ者はいないであろうKindle紹介サイト「きんどう」( http://kindou.info/ )の1000日突破を記念して、そのノウハウやら経緯などをまとめたKDP本「Kindleまとめサイトでどうにかこうにか1000日間生計をたてた話」が出されました。

なんかちょっとそれに関係した一方で、書きたいこと多いままとりとめなく書き散らした結果、書評というにはアレなぶつ切り記事になってます。気にしたら負けです。

 

自分の立ち位置について

先に断わっておきますが、Twitterで募集やってて手を上げたので第一章の下読み手伝ってます。
とはいえ、読めばわかると思いますけど、日和った紹介はしませんのでご安心を。 (?)

 

さて、その立場から言わせてもらうと、本書は中の人が色濃く出過ぎていてかなりとっ散らかった本です。
下読み手伝った人間としては、表記ルールや敬体と常体すらまとまっていない現状を「出版業界を意識した売り物としてどうなのさ」と思っていますが、そういう「常識」に縛られずに身軽に動いているからこその本書です。(ヲイ

ここは冗談ってだけではなく、そういうところで工数を割きすぎて身動き取れない出版業界の人、多いんじゃないでしょうか。
WEBってもっと適当なところですし、実際にそれで売れてるんですから、とりあえずでいいからさっさとやるって重要です。

 

電子書籍を売るということ

電子書籍を売るにもいくつかのレイヤーがあって、

  1. 個人規模で売りたい数冊
  2. 出版社規模で売りたい数百冊
  3. 書店規模で売りたい数万冊

の3つに大別されます。
その中で出版社が電子書籍を本気で売る気ならば、2だけ視るのではなく、2のために3の視野を持った販促メディアを持とうってのが本書の主張の骨子です。

これには大賛成です。自分なんて、zonさんと飲んだ時に「我々みたいなアーリーアダプターなんていちいち相手をしているんじゃない。「日常的に読書する層」、「すでに電子書籍をする層」なんて狭いレイヤーを相手にするんじゃなくて、「スマートフォン使っている数千万人」を引き込む努力やってくれ。」と訴えたくらいです。電子書籍を狭い括りで売ろうとしてもジリ貧だと考えています。

そして同時に「さっさと商業的な体制に移行してくれ」とも訴えました。だって、100万円単位を売り上げるなら個人を前面に出した方がいいと思いますけど、1億円単位を売り上げるとなると個人では限界あるじゃないですか。

 

担当者のガッツと滅私、献身があれば三ヶ月くらいで出版社によりますが毎月五千〜一万冊程度を安定して売り上げるメディアをつくれるんではと思うんですよ。

しかしながら、そこで本書で示されている――実際にzonさんがやっている1億円単位の売上すら視野に入れる対応方法は、個人の限界を「個人(or 数人だけ)が生活すべて賭けてやる」という剛腕で押し上げている根性論なので、真似すると物理的に死ぬ奴です(笑)
もちろん部分部分は参考になることが書いてありますが、全部は真似できないでしょ……

要するにそういう本なので、我々のような一般読者は血反吐を吐いてる様子を対岸から眺めて震える、実録ホラー作品として楽しみましょう。(ぇ

 

本を紹介する「さじ加減」

週に一度更新するかしないかわからないブログに、ツイッターと同じ内容を垂れ流すフェイスブック。未読ばかりのLINEや最終更新が三ヶ月前のメルマガとかは負の資産でしかありません。中途半端に手を出すくらいなら最初から絞って順に育てていくほうが確実です。

ついやりがちなのは中の人感を出そうと今日食べたご飯の話や、まったく無関係な政治の話題などをしてしまうこと。これはファンサービスやネタ切れの時くらいにしておきましょう。電子書籍を売るためにやっていることで、中の人をデビューさせるわけじゃないですからね。メディアのテーマがブレてしまうと、ファンは離れていきます。

個人的に本書で一番実用性が高い部分は、ネット上で本を取り上げる際の「取り組み方」と「さじ加減」についてだと思います。
良くも悪くも属人性が高くなるWEB販促は、方向性を間違いやすい懸念が付きまといます。

そこで肝心のzonさんですが、中の人寄りに設定されてるキャラ付けはかなり計算して今に至っているってことがきちんと言語化されています。
ここの部分は電子書籍などは関係なく、企業のSNS担当なんかになってる人なら一読の価値があるでしょう。

 

WEB・SNSの活用(出版社側)

そもそもの部分で本書の根幹を全否定するようですが、出版社によるWEB・SNSの積極活用って、あんまりうまくいくとは思えないんですよね。

たとえば、作中でも名前が出てくる星海社さんの「最前線」( http://sai-zen-sen.jp/ )。
講談社資本のベンチャーという出版社であり、出版業界のWEB・SNS活用例としては文字通り「最前線」でしょう。

しかし、どうにもかけてるリソース量に対してリターンが小さすぎるんじゃないかという疑問がぬぐえません。
これは観測範囲問題とかではなく、客観的な事実としてハッシュタグ「#sai-zen-sen」付きの言及がサイト全体で 1日10ポスト程度なんですよね。
もちろん、徹底的にサイト全体へshareボタン配備してハッシュタグも積極的に埋め込んですらこれです。

WEB・SNSって無限に無料のテキストが湧いて出るスペースなので、書籍の販促の主とするには相性が悪いんじゃないでしょうか。
おそらく電子書籍自身が媒体として伸びない理由の一つもそこにあるんでしょう。

 

同じ流れで紹介するなら「講談社ブックカフェ」(http://cafe.bookclub.kodansha.co.jp/)なんかも参考になるでしょう。

こちらは「講談社BOOK倶楽部」という既存読者寄りで紙側が主体なサイトです。
出版社が得意なのはこういう補助的な部分で、「本を売る」というのはあくまで本屋のお仕事なんじゃないかなぁ、と。

 

んで、こういう視点で本書を読み進めていくと、どうも理想的な電子書籍販促の在り方が見えてこないんですよ。強いて言えば、第2のきんどうをいち早く作った出版社が勝ちという(笑)
ま、ここに普遍的な答えなんて無いんでしょうけどね。

 

なお、最前線を否定的に書いてはいますが、自分はアンチ星海社の人ではなく累計50冊以上買ってる読者側の意見なので、そこのところよろしくお願いします。
個人的には、黒い大型新人さんや、アリュージョニストの人「トモちゃんは女の子!」には頑張って伸びていただきたいんですが!!!

 

はてなの活用

メディア作りに取り組む前に出版社さんと話していて何度か耳にしたのが「あまりネットメディアに詳しくなくて……」という電子書籍担当者さんの言葉。本気で取り組むならメディアを作る前にネットに強くなりましょう。修行として「はてなブックマークのホットエントリー(http://b.hatena.ne.jp/)」を毎日全部読むのが良いですよ。

端々に「はてな」の活用を匂わせており、ハラハラします。

実際にzonさんは活用できているとは思いますが、ネットの活用がわからない人がはてなの活用を狙っても大火傷するだけなのでは……。でも、俺はそれが見たい!!!!

そもそも、現状ではてなブログ利用している出版社公式ブログとかってあるんですかね???
斜め方向からの活用例としては声優の緑川光さんが真っ先に浮かびました。

 

SNSの活用(読者側)

本書で推されているシェアする読み方が主流になるかも、かなり懐疑的です。
本書の中でも紹介されてる「#Kindleカフェ部」、アクティブな活動部員は俺と他数人くらいですし!

 

とはいえ、これは出版業界側の問題が強いのかなぁとも思ってます。

変な例えですけど、2011年4月期まではアニメ公式のTwitterアカウントとか半分もなかったんですよ。それが2011年6月期にいきなり8割超えて、今ではアニメ公式Twitterはあって当たり前の存在になっています。 それに付随して、視聴者側も感想やら実況やらにもハッシュタグを付けることに違和感は取り払われています。
もちろんアニメ全体の本数が限られているとか、コミュニケーションの同期性が高いとか、親和性が高かった面もあるんでしょうけど、 業界全体で公式が安価な告知ツールとして積極活用したのが早かったのもあるはずです。

 

そうなると出版業界も全体――とまではいかなくともジャンル単位で足並みを揃えて、「小説を出版する際に公式のハッシュタグを必ず明記する」というように徹底出来れば、販促とまではいかなくても読者の反応収集ツールとしては有効に機能すると思うんですよ。 (それも「最前線」がやってはいますが……)
一度シェアすることが当たり前になってしまえば、広く普及しうる行為ですし、それこそ電子書籍の普及にも結び付くのではないかと。

そういう意味では、出版業界向けに書かれた本書が一つのきっかけとなったりしたらおもしろいですね。

 

「1000日間」 の重み

zonさんがすごいのは「継続」の部分なんですよ。
わかる人にはわかる表現を使うとすると、ニュースサイトとしての「カトゆー家断絶」が広告収益化やブログ化の流れにも乗らず、淡々と、淡々と、淡々と膨大なニュースを捌き続けていた戦慄に近いアレです。

経験から一日に大量に更新しすぎると読者側も疲弊するので、八記事くらいまでに抑えるのがベターという結論になりました。

言うは易く行うは難し。
単純計算で調査含めて1記事 1時間でも8時間。実際にはそれだけじゃ済まないから文字通り生活を賭け続け、それでもなお「八記事までに抑える」と言い放てる忍耐力こそ、きんどうが1000日続いた原動力でしょう。

 

そして、そこに加えてすごい部分が「芯のブレなさ」です。

自分なんかは、それこそきんどう開始1ヶ月後にはKDPで出した本の紹介インタビューに顔出している人間なので、ほぼ1000日間ウォッチしている計算です。
その立場からも保証しますけど、きんどうのサイトは方向性が当初からブレてないんですよね。もちろん記事の種類や企画記事の内容なんかはある程度移り変わっていますけど、芯にある部分は全く変わってません。
ここは「水曜どうでしょう」の在り方にも通ずるところでしょうか。

本書では、そういうzonさんから紡がれる初期コンセプトの重要性の話や、販促メディアの育て方についてが載っているわけです。
血肉が通ったその内容は、どんなコンサルタントや業界人よりも含蓄があるに決まってるじゃないですか、そりゃ。

 

おわりに

予約してくれるような熱心な方のために最初を一番安くした方がいい

とのことで、予約は100円→発売後1週間ほど150円→通常250円というスケジュールだそうです。この売り方はとても誠実でわかりやすいと思うので、広く用いられるようになってほしいですね。
そんなわけで、9/4頃までのセール中にポチっておきましょう。そして、できれば読みましょう。(ぇ

Kindleのまとめサイトでどうにかこうにか1000日間生計をたてた話

Kindleのまとめサイトでどうにかこうにか1000日間生計をたてた話