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将棋電王戦 第3局でツツカナの指した△6六銀について

   

昨日の電王戦第3局は、コンピュータとか関係なく、純粋に一局の将棋として素晴らしかったですね。
先手で研究十分な船江五段が、明確な悪手で一気に形勢を損ねたわけでもなく、何度も優勢を築いた上でのツツカナ勝利ですから、ツツカナがものすごく強かったのでしょう。もちろん、それを正面から受け止めた船江五段も同じように強かったからこその大熱戦です。改めて、将棋の素晴らしさを思い知らされました。

 

さて、昨日の一局はツツカナ側に印象深い手が多かったです。74手目△5五香、94手目△6六銀、そして116手目△7三桂などです。

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その中でも指された瞬間に度肝を抜かれたのが△6六銀です。
元々、位置が悪いので取られる事もないが使う事もできなかった7五の銀を、忙しい終盤にもかかわらずグイッと一歩押し込んできた手ですね。まさに「指されてみるとなるほど」という、先手陣を圧迫しつつ先手の龍の効きを弱めるタダ捨てで、素晴らしい一着に見えました。
しかし、この手の直後にツツカナの形勢は一気に悪くなりました。

△6六銀が単なる水平線効果だとは思えなかったので不思議だったのですが、1日立ってわかった結論に驚愕したので、今日はその辺をまとめます。

 

△6六銀の問題整理

△6六銀は、ネットに生息する将棋の精霊さんこと@itumonのリアルタイム解説によると

という負けないために必要な一手なはずです。
しかし、▲6六同龍と当たり前に取られただけで、一気にツツカナ自身の形勢判断もひっくり返って不利だと認識しはじめました。

 

△6六銀の意味

それについて、昨年度も世界コンピュータ将棋選手権で決勝リーグに出場したYSSの山下さんが、自身のサイトの掲示板で推測を寄せていました。

結局のところ、△6六銀を指した直後に見落としに気付いたんだろうという事です。ただし、局面が局面だけに、その内容が難解すぎて笑いしか出ません。

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具体的にまとめると、

  1. △5八金▲同玉△3八角成からの挟撃形によるラッシュを仕掛けても、この瞬間が王手ではないので逆に▲2五龍!△同玉▲2六香からの7手詰み
  2. それを避けるために、△6六銀で▲2五龍を消す筋を含めるのが必須
  3. △6六銀▲同龍を入れた事で、△5八金▲同玉△3八角成の瞬間が△4九角からの19手詰みを見た詰めろ
  4. しかし、△6六銀▲同龍を入れても同じく△3八角成の瞬間に、▲1五銀!△同玉の変化で計21手で頓死
  5. ツツカナは4の変化に△6六銀▲同龍の後に気付いたため、仕方なく△4二歩

という流れらしいです。
実際、ツツカナの形勢ゲージが反転したのも△6六銀▲同龍の直後でした。

わかりやすく言えば、「後手が決着を付けにいこうとしたら、その瞬間に返し技を食らう事に気付いた。そこで、それを防ぎつつ勝ちを見据えた△6六銀が炸裂。しかし、実はそれにも返し技で負けだと気付いて、技を繰り出した後ながらグッと踏みとどまった」って感じでしょうか。はい、書いていて全然わかりやすくならないほど難解だったようです。

この辺、確かに水平線効果と言われたらそうですけど、この領域はもはやうっかりとかミスとは言わない気がしますが、どうでしょう?(笑)
詰将棋とは違って王手という手の縛りが無い詰めろはコンピュータは少し苦手な領域という話もありますが、近いうちにこういう問題も苦にしなくなるんでしょうね。(というか、演算能力と持ち時間の配分なだけなので、解決しようと思えばすぐにできるわけですし。)

 

おわりに

何がすごいって、勝敗はどっちが勝ってもおかしくなかったので脇においておくとしても、印象深い一手を残しているのがツツカナ側なんですよね。しかも、どれもコンピュータらしい手だからというわけでなく、トッププロを思わせるような印象深さだからというのが進歩を感じます。
個人的には、第2局でプロが初敗北したことよりも、こちらの方が驚異だと思います。

ふう、全く違うとは言え、うちのブログで再度△6六銀にて丸々一本記事書く事になるとは(笑)

参考:羽生王座20期達成の礎となった羽生マジック △6六銀

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