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将棋電王戦 第2局が10倍楽しくなるかもしれない対局者紹介 Ponanza VS 佐藤慎一四段

      2013/03/30

注;第1局を見ていない・詳細がわからない方はマイナビの記事がどなたでもわかるようにかみ砕きつつも正確な事を書いていて非常に良い記事なので、そちらをお読み下さい。また、そもそも将棋電王戦についての背景がわからない方は、開幕前に書いた解説記事『将棋電王戦前に知っておきたい6つのこと』の方からお読み下さい。

 

さて、電王戦も第2局に突入です。1局目の阿部光瑠四段があまりに見事なコンピュータ対策を成功させて度肝を抜かれただけに、自分の中での期待と要求レベルが非常に高まっています。では、今回も対局者(ソフト)の紹介を自分の持つ勝手なイメージと独断と偏見で行っていきます。

 

後手:佐藤慎一四段

26歳という規定ギリギリでプロ入りを果たした苦労人。数学的に棋力を数値化したレーティングでも棋士全体のほぼ平均値で目立った成績も無く、ご自分でもそれを踏まえた上で全力を尽くすタイプの棋士です。

しかし、そんな佐藤慎一四段だからこそ、電王戦にふさわしいと思っていますし、何より出場棋士5人の中で一番応援しています。コンピュータ相手に意味はないのかもしれませんが、この人の持つ「人間味」が電王戦で輝いてほしいのです。

佐藤慎一四段の人となりが一番出ているのがご本人のブログなのですが、自分の内面を吐露しているその内容にはいちいちグッときます。

とくに、親友の阿久津七段(わるよい)相手との数々のエピソードは厚い友情を感じます。阿久津七段も第1局の解説ニコ生にて、小学生の時に佐藤慎一四段に出会ったのがプロを目指すきっかけだったと語っていて、胸が熱くなりました。

そんなわけで、100の言葉を並べ立てるよりも、ご本人のブログを読んでもらった方が伝わると思いますので、いくつか将棋に対する思いが伝わってくるエントリをリスト化してみました。

前回の記事でも書きましたが、プロの将棋は単に強いってだけでなく、棋士自身の個性や持ってる背景も含めた上でこそドラマが生まれるからこそ人を魅了するわけです。明日はどんなドラマが生まれるのか、ワクワクが止まりません!

 

先手:Ponanza

よくわかりません!!!!!(死

いや、あの、これでも初期バージョンの元ソースまで読んだことまであるのですよ。しかし、何度となく一から書き直されているようで、現在は何がどうなっているのかさっぱりです。少なくとも、Ponanzaは名前だけもじっているだけで、プログラム的にBonanzaとの関係はほとんどないはずです。

ただ一つ言えることは、一番わけがわからないので今回の電王戦で一番やりづらい難敵だということです。
昨年の世界コンピュータ将棋選手権の戦い方でも、角道を止めて雁木や右玉など意図的に珍しい局面を選んでいました。これはPonanzaがそういう手が得意というより、対コンピュータ将棋で定跡を外すように序盤に人の手が入れてあった印象です。

その元凶こそが、開発者である山本一成さんです。

この人、元東大将棋部所属の高段者で、東大の将棋ソフト研究を行っている研究室を渡り歩き、将棋専門誌でも連載持っていたりしたという、将棋界では結構な有名人だったりします。今は将棋ウォーズというスマートフォン専用将棋道場サービスの運営会社に所属しているようで、趣味が高じてそれで食べていけているという幸せな人です。彼の持つコンピュータ将棋周りのエピソードだけでも、

  1. 電王戦開幕時のインタビューで棋士側へのプログラム提供は一切行わないと断言
  2. 去年のコンピュータ将棋選手権で対コンピュータ将棋専用戦法『稲庭戦法』をPonanzaにやらせる
  3. 先日のGPS将棋100万円チャレンジで自身が稲庭戦法を用いて挑むも、長引きすぎてつまみ出される(ただし、これは運営のルールが悪いし、実際400手越えた辺りでGPS将棋が暴発して勝てる予定だったらしい)

など、定跡は一切通用しません。今回のPVでも、2手目△6二玉を採用した故・米長永世棋聖の姿勢を褒め称えて、自分も同じタイプの人間だと公言しています。次は何をやってくるんだろう……。

 

印象深いPonanzaの一局

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昨年の決勝リーグ最終局、GPS将棋に勝てばPonanzaの優勝が濃厚という大詰めの一局は、超乱戦に。

そして、終盤で見事にすっぽ抜けました(笑)
この△5九銀が何の意味もない一手ですぐに取られてしまい、そのままズルズルと終局へ。そもそも、この数手前でミスっていて勝ちを逃していたようです。専門的に言えば▲6七玉の位置が例外的で評価しづらかった面があるのでしょうが、そういう将棋を好んで指すのがPonanzaな印象なんですが。

いやー、これはリアルタイムで見ていたときには唖然としましたね。「コンピュータの終盤だから何かあるのでは!!?」と考えてしまうところで何も無いんですから(笑)
もちろん優勝一歩手前まで来ている時点でその棋力に疑いはないのですが、山本さん自身が序盤先行型で終盤が下手だと公言しており、いろんな意味で定跡外れまくったコンピュータ将棋ソフトです。

 

個人的な見所

コンピュータ将棋は弱点を作らないようにどんな戦型でも指しこなすよう設計されるため、開発者自身が事前に手の入力などは行わず、基本的にコンピュータ任せにするのが普通です。

しかし山本さんなら、対佐藤慎一四段専用に絞った戦法へ誘導してくる……というか、絶対にやってくると信じています。(笑)
せっかくの先手番ですから、後手の用意してきた研究を積極的に外すだけでも盤外戦術として精神面で優位に立てるはずです。(すでにこの時点でコンピュータ将棋の考え方じゃないw)
ざっと思いつくだけでも、初手▲5六歩、▲6六歩、▲1六歩辺りから強引に振り飛車にするとか、積極的に角交換してダイレクト向かい飛車からあえて△6五角打たせて超乱戦にもちこむ、あえて角道を開けず複雑怪奇な相掛かりへ誘導するなど、いろいろと考えられますね。
山本さんの棋力と開発力なら、コンピュータ版2手目△6二玉のような常識外にあるい一着すら選んでくる可能性もあります。
ちなみに、評価関数自体は弄っていないそうです。


将棋電王戦は人間VSコンピュータという構図なはずなのに、その実は人間VS人間である第2局。第1局がコンピュータ対策が完璧すぎる一局だっただけに、コンピュータと人間の両方と戦うことになる佐藤慎一四段がかわいそうにすら思えてきます。
5種類のコンピュータ将棋が出場するルールだからこそ見られる、第1局とは全く違う戦いとのギャップに期待したいですね!!!

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