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将棋電王戦 第1局が10倍楽しくなるかもしれない対局者紹介 阿部光瑠四段VS習甦

   

注:先に電王戦の全体解説からお読みください.

さあ、第2回将棋電王戦がとうとう明日に迫ってきました。
男性プロ棋士が公式戦で初敗北を期してしまうのか。そして、一説には名人をも越えたと言われるコンピュータ将棋が本当はどれだけ強いのか。今からワクワクが止まりません。
将棋界の歴史に残る一大イベントですし、ドワンゴさんのがんばりにより、将棋をよく知らない人すらニュースを目にするイベントになるでしょう。

そこで僭越ながら将棋観戦勢のオイラが、対局者(ソフト)がどのようなものなのかのざっくりとした解説を行ってみたいと思います。

 

棋士を知ろう

将棋には棋風というものが存在します。野球のピッチャーでいうところの軟投派だとか、技巧派とか、本格派とかみたいなものです。
同じ局面を迎えても、その棋風や性格で指す手や形勢判断も異なってくるため、「対振り飛車党専用の手」とか「居飛車党らしい細い攻めの繋ぎ方」など、対局者を知ってこそ観戦の魅力が増すわけです。

そして、電王戦だからこそプロ棋士については棋風などの様々な情報を是非知ってほしいのです。
単に強いだけでいいならコンピュータ将棋が人類より強くなったら棋士の存在価値が無くなってしまいますが、もちろんそうではありません。棋士自身の個性や、持ってる背景も含めた上で指される一局にこそ、一つのドラマとしての見応えが出てきます。

では、オイラの持つ勝手なイメージと独断と偏見で、電王戦第1局の出場棋士ならびに出場ソフトの解説を行っていきます。

 

先手:阿部光瑠四段

史上5人目の中学生プロ棋士か!!?と騒がれたほどの期待の新星です。
プロ入り2年目でその若さからか安定性に欠ける印象はありますが、当たるとものすごく、昨年の朝日杯でデビュー直後の四段がA級棋士に3発も喰らわせたのは印象深いです。旧パワプロでいうところの「ムラッ気」でしょうか。

棋風の方もまっとうな居飛車党ながら、個性的としか言いようがない作戦の組み立てで見ていて楽しい棋譜を作る方です。この辺り、コンピュータが判断に誤るような手を繰り出してくれそうで、電王戦でも期待ができます。

さて、そんな阿部光瑠四段で最も我々(?)が注目すべきは「若い」という部分です。だから何だよと言われそうですが、なんとボカロ厨なんですよ、彼!!!
携帯向けの配信コラムでは、電王戦への意気込みと亡き米長会長への追悼を著す中で、アニメとボカロと映像作成に興味があるから電王戦スポンサーであるニコ動にいつか動画投稿したい旨を蕩々と語っていました。いいぞ、もっとやれ!

これはネタ的な意味だけではなく、ニコ動への心理的抵抗が少ないということですし、電王戦に関してもかなり積極的に名乗り出たようです。第1回電王戦前にボンクラーズがネット将棋道場に参戦したときも積極的にチャレンジしていたという話もあり、将棋電王戦の開幕戦に最もふさわしいプロ棋士が選ばれたと言えるかもしれません。

参考:阿部光瑠「コンピュータと指したい」(2ch名人)

 

後手:習甦

その漢字に「羽生」の名前を秘めた習甦がトップバッターです。
比較的新しいソフトですが、世界コンピュータ将棋選手権では登場2年目から上位の常連になっており、その強さに疑いはないでしょう。

羽生三冠とコンピュータ将棋と言えば、惜しくも6位で電王戦には出られなかった「激指」を思い出します。「激指」は、この世で最も強い棋士=羽生三冠の棋譜をベースに有効な手を絞るという棋士の思考に近いアルゴリズムで一世を風靡しましたが、習甦もアピール文から推測できる範囲では、同様に人間に近い感覚――先を見据えたときに勝ちやすい手を選ぶという設計のようです。実際、去年の世界コンピュータ将棋選手権を見ていて、習甦と3戦目のツツカナの将棋は、人間が指しているかのように綺麗な将棋でした。

たとえば、第5戦のGPS将棋などは1秒間に2億手以上読めるようですが、人間は有効な手を一目で絞り、ざっくりとした局面の形勢判断を経験で行うことで、1秒に10手すら読めなくても対抗し得るわけです。
それと同様に、形勢や有効手を判断する『評価関数』を作り込むことで、1台のマシンでも上位陣と渡り合えるソフトに仕上げているのです。ハードウェアスペックとクラスタ化により計算力だけで名人を上回れそうなご時世になってきましたが、だからこそアルゴリズムで勝負している習甦には奮戦を期待したいものです。

また、電王戦開幕時のインタビューにて開発者の竹内さんが

将棋には2人いて勝負を争うという観点だけではなくて、2人で棋譜という芸術品を作るという観点があります。
このような対抗戦のイベントになりますとどうしても勝負という観点に注目が集まるとは思うのですけれども、芸術という観点にもぜひ注目して頂きたい。

と言っていたのが非常に印象的でした。言葉の端々にも棋士への尊敬の念を感じます。是非、習甦には見事な一局を紡ぎ上げてもらいたいですね。

 

習甦で印象深い一局

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将棋がわかる人向けに、習甦の強さがわかる一局を。
去年の世界コンピュータ将棋選手権 決勝リーグ第3戦 習甦 VS ponanzaです。

局面としては、先手の習甦玉に△5八飛から△5五金捨てという難解な詰めろがかかっている一方、後手のponanza玉は飛車の横利きが強力でギリギリ詰まない形です。
しかし、次の一手が攻防の妙手でした。△5五金を消す▲6四銀が詰めろ逃れの詰めろの大逆転。

当時の中継ニコ生で解説の西尾明六段が、△5五金は詰めろかどうかの確認に手間取るほど難解な局面で、きっちりとこの一手を指せるわけですよ。そして何より、押され気味で一手足りない局面からここまで運べるのが見事です。習甦は、受けの時に妙に粘りのある手で複雑な局面を作れる印象があります。この辺が「人間らしい」と感じる所以です。

 

個人的な見所

後手の習甦がオーソドックスな相居飛車の定跡形に乗ってきて、そのまま阿部(光)四段から積極的に変化したときに習甦がついていけるか……という展開が見られたら最高なのですが、どうでしょうか。

ニコ生解説が居飛車党の阿久津七段ですし、現役プロ棋士が初めてコンピュータに負ける歴史的一局になるかもしれないわけですから、文句の付けようがない堂々とした居飛車の一騎打ちを見てみたいです。空気を読んで、2手目△8四歩(何でも注文を受けて立つぜ!という男らしい一手)を習甦が突かないですかね?(笑)

 

第1局専用PV来ていた!!

こーるくんのあきばろけひどい


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