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『おおかみこどもの雨と雪』で胃が痛くなった同士募集中

   

かなり出遅れたけど『おおかみこどもの雨と雪』を観てきた.
観ることは決めてたのでネタバレ怖くて既存のレビューとか全く読んでないけど,いろんな分析出てるであろう事は想像に難くない映画だった.今更なので,深くは突っ込まずに超主観的感想だけ書いておく.ネタバレは全開になってしまった.

 

まず,細田監督の直近2作を振り返ると,『時をかける少女』は起承転結の綺麗さ,3人の距離感,千昭の青臭さなど全てにおいてツボに入ったので劇場だけでも片手で数えられないほど観たが,『サマーウォーズ』は展開のぶつ切り感やあの家族の現実味の無い気味の悪さがどうにもマッチしなかった.

そんな中での『おおかみこどもの雨と雪』.結論としては,サマーウォーズよりよっぽど好みではあったが,相対評価は仮面ライダーフォーゼと石ノ森章太郎版仮面ライダーを比べるくらい無意味な作品だった.

 

『おおかみこどもの雨と雪』が内包していた構造上の重要な要素として

  1. 母親である花の内面を全く描こうとしていない
  2. 母親である花が置かれてる環境が社会的にも経済的にも法的にも危険すぎる

の2点が挙げられる.

ここに加えてもう30歳見えてきた自分が,ナレーションである雪側の視点に立てるわけも無く,花への感情移入ないし内面分析へ向かったわけだ.結果として,ファンタジーに踏み込んだフィクションだというのに,観ている間中ずっと胃がキリキリしていた.カット割りやら演出論にまで目を向ける余裕も無かった.そんなわけで,ジブリ感覚で見に来ていた隣の親子連れがどう受け止めたなんて想像も出来ないのだ.

 

 

開幕から便所飯コースなボッチの花さんは,唯一見つけた拠り所に先立たれ,人生に残された目標であり希望は2人の子どものみ.しかし,その2人は先天的に社会的弱者になり得る存在であり,秘密も苦労も全てを抱え込み続けるしかないわけだ..

もはや,自分には花の一連の子育てが母性などではなく,一種の宗教観や強迫観念で動いているようにしか思えなかった.だが,そこまでして育て上げたってのに,子どもの片割れがおおかみとしての生き方を選び,自分を捨てようとするわけである.

曲がりなりにもどちらの道をも選べるように育てたとは言え,花は人間であり,花が愛した『彼』はおおかみにもなれるただの人間だったのだ.
怪我をした草平と食卓越しに会話するシーンで「おおかみは嫌い?」,「嫌いじゃない」,「おばさんとおなじだ」なんてやりとりをしてたが,おおかみへの距離感はそれが一番近かったんだと思う.そして,花は徹頭徹尾,人間社会に『おおかみおとこ』は相容れないという現実的な判断をし続けたことを忘れてはいけない.

そりゃあ,実際に息子がおおかみとして生きるために出て行く選択をしたら引き留めるわな.あのシーンだけは,花の内心が垣間見えた気がする.

さらにラストのシーンも,夫である『彼』とのやりとりを挟み,「世界が生まれ変わったよう」だとでも考えなければ,精神の糸が切れかねない際どいものに見えた.日テレ資本のアニメながら,巣立ちの残酷さを巣立たれる方にする辺り,細田監督は相当な病気だと思う.(褒め言葉)

 

自分はこんな風にしか花を捉えられず,その他全ての要素は掘り下げる必要の無いおまけだと思えるくらいに花に囚われた.だから自分の中の『おおかみこどもの雨と雪』への評価はものすごく高いが,世の大半からは「何観てたのおまえ?」と言われる自信がある.来年辺りの金曜ロードショーでキモチワルイ実況Tweetしてるアホがいたら,華麗にスルーをお願いします.

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