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初めてSFを読む人が導入に選べばいいんじゃないかな?と思う国内SF10作品を選んでみた.

はじめに

SF読みたいならこれ読んでおけって話はよく見かけるのですが,海外の古典から始まり,「オレはこんなのが好きだぜ」的マニアックな方向へばかり走ってしまうのがマニアの性で、結局何を読めばいいのかわからなくなる事ばかり.でも,ハリウッド映画のSFは一般受けするように,SFなんて枠組みさえ捉えてしまえばもっと気軽に楽しめるジャンルだと思うわけです.この辺に関しては星海大戦あとがきに詰まってますので,気になる人はそっち読んでください.

さてそうなると,SFを普段読まない人達にSFってこんなのだからと紹介する場合,日本人作家が最近刊行した1巻完結作品を基本とするのがベストだと考えまして,それにある程度準じた10作品を選んでみました.後半になるほど難易度が上がります.なお,普段SF読まない人向けではありますが、小説読むのが苦手な人にはきつい重量級ラインナップになっているのでご注意を。

新城カズマ サマー/タイム/トラベラー

入りやすいという意味で、SFを盛り込んだ青春小説を選んでみました。でも、単純なジュブナイルで終わらないのがこの作品が薦めるに足る所以。全2巻ながらあらゆる要素が詰め込まれ、ラストへ繋がるおもしろさは、普遍的で最上級の娯楽だと思います。

桜坂洋 All You Need Is Kill

ラノベ史上最高のSF作品は本作か紫色のクオリアって部分ってのに異論を挟む人は少ないでしょうが、本作の方がラノベの枠組みの中から逸脱せずにしっかり読ませるSFとして成立して点でオススメできます。近未来の異星人との戦争,そしてループ物というベーシックな部分を昇華して、ラストの一杯のコーヒーへ繋げる桜坂先生の手腕は実に見事で、この次にハヤカワJAで書いた"スラムオンライン"も併せて読んでほしいと思います。

伊藤計劃 虐殺器官

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

入れるのも野暮だけど、入れないのも野暮という苦渋の選択で入れました。メタルギアシリーズと共に育った自分の世代だと特に入り込んでしまう近未来の戦場と、それだけで終わらせない虐殺器官のアイディア。ゼロ年代最高の小説の一つであることに疑いはないでしょう.

山本弘 闇が落ちる前に、もう一度

SFといったら短編だよなぁと思っていろいろ考えたんですが、国内作品らしい切り口で楽しい作品をたくさん生み出してるのは山本弘先生だと落ち着きました。最初挙げようとしたシュレディンガーのチョコパフェはライトに見えてハードな短編集なのですが,本作はハードに見えて間口の広い短編集.ホラー寄りでロジカルなショートショートという読みやすく中身の濃い小説です。表題作がものすごく好きなのですよ。

野尻抱介 太陽の簒奪者

太陽の簒奪者

太陽の簒奪者

宇宙を書かせたらこの人と言わざるを得ない野尻抱介のファーストコンタクトもの.一昔までの荒唐無稽な未知の生命体からは一歩引いて,あくまで現代的な科学の感覚で調査からSFな要素へ引き込まれていく展開は,ハードSFなのにリアリティを伴いつつ軽妙に楽しめる希有な傑作だと思います.今回のオススメSFリストも,徐々に馴らして本作まで行き着いて読んでくれたら,と思って書いたと言っても過言ではありません.

三島浩司 ダイナミック・フィギュア

ダイナミックフィギュア(上)

ダイナミックフィギュア(上)

“翼を持つ兵器を禁じられた讃岐平野"……今見ても帯の文句の意味不明っぷりが突き抜けてますが、荒唐無稽としか言いようがない人型巨大ロボットとその運用の制約を無理矢理納得させる世界設定はこれぞSFですよ! 宇宙からの飛来物と,そこから進行してくる異星生物.そしてそれを迎え撃つ人型兵器と自衛隊.この設定に燃えない人とは友達になれません.そして,ストーリーの方も,どこまで人も敵も成長するのか全く読めず,まさに読む手が止まりません.ほぼ無名ですが,本年度最高だと信じてます.

小林泰三 ΑΩ

これも完全にオイラの趣味なので,一般受けなどは望めません(笑) しかし,ウルトラマンを現実的に解釈し直すというアホな行為に本気で取り組む姿勢こそ,海外SFでは読めない作品だと思うのですよ.怪獣倒した後の処理や,巻き込まれた遺族に至るまで,現実って厳しいわけです.同じく,エヴァっぽい天獄と地国も合わせて読みたい!

小川一水 天冥の標

当代随一の日本人SF作家 小川一水.その代表作となることが約束されており,現在も刊行中の一大巨編"天冥の標".正直,シリーズ物を薦めるつもりはなかったんですが,SFファンなら誰しもが読んでおり,今この瞬間からでもその生き証人になれるんだから,読まない手は無いと思うわけです.現在,全10巻中4巻が出ていますが,未だに世界観と何を書きたいのかも見えてきません.それでも,1巻1巻が違う時代を舞台に単体で楽しめる作品ながら,やはり10巻で1つの巨大な世界の流れだと確信出来てしまう卓越した筆致.もう一度言います,10巻読了時には日本SFが1つの金字塔を打ち立てる生き証人になれます.

田中啓文 銀河帝国の弘法も筆の誤り

銀河帝国の弘法も筆の誤り (ハヤカワ文庫JA)

銀河帝国の弘法も筆の誤り (ハヤカワ文庫JA)

自分でもなんでこれを入れたんだろう感がものすごいけど,"真面目すぎるなぁ.頭悪いのも入れないとなぁ."と思って浮かんだのがこれでした.SFをベースにした馬鹿で下品で最低なダジャレ満載のキワモノ小説です.選んでおいてあれですが,ここまで踏み込んだら立派なSFファンと言えると思います(笑)

神林長平 膚の下

膚の下(上)

膚の下(上)

最後に持ってくるべき2000年代で一番ずっしり来た作品って何だろうかといろいろ悩んだ挙げ句,火星三部作に落ち着きました.いくつもの時代,惑星を越えて見えてくる,種を越えた魂の在り方の物語.膚の下を読んでる時には,感動とも別次元の原初的な感情の発露で号泣しました.前作までで何かスゴい物を書いていた巨匠 神林長平が,本当にスゴい物を読ませてくれた瞬間でした.ヲタさん的には,本作をじっくり噛みしめた後に,ハルヒのアニメでミステリックサインのラストにて長門が膚の下を読んでるのを見てさらにグッと来るわけです(笑)

終わりに

海外SFだとロバート・チャールズ・ウィルスン 時間封鎖とか,グレッグ・イーガンの万物理論とか読んで欲しいけど,どうしても翻訳までされる最新SFってSF読まない人には薦めづらいものが多すぎるきらいが……・.